久しぶりの泊まりで、困った、そこかしこにマサキのにおいがする。クッションも、枕も、勢いで飛び込んだままのシーツも、部屋自体がぜんぶぜんぶマサキを浮かべさせる。長い時間一緒にいるのも、部屋にくるのも、ずっとずっと我慢が続いて、それに伴うことも私は知っている。まだマサキは風呂に行くっていったきり時間も経ってない。きょろりと耳でも目でも一瞥して近くにいないことはわかる。
確かめる、だけ……右手をそろりと下腹部に持っていく。ショートパンツのゴムもパンツも抜けてその先、中指を沿わせればぬるり、と大層湿った感覚。思わず吐いた溜め息の代わりにと取り込んだ酸素は意地が悪く、居ないマサキを感じさせる。打ち速まる脈には勝てずに「少しだけなら」入り口から指はさらに沈んで気持ち動かす。目を瞑り、呼吸をして、撫でる。
どうしよう、どうしよう、マサキに、されてるみたい。

「ふ、 ……っ、ん、マサ…ぁ」

やめないと、止まらない、一回どうにか、ばれる、でも。頭も指で引っ掻き回しているようで、何もない私の部屋でマサキを想うのとここじゃ訳が違くて、それが困りものだった。わかっていてもどうしようもない。

「んっ…は…マサキ…ぃ…っ」


「……一応訊くけど、何やってんの?」


「っ!?」

どうしよう、どうしよう、どうしよう、いつから、どうしよう、わかる、幻聴じゃない。幻聴じゃなくシーツの上、布団を被った私の向こう、ドアの前からしたのはマサキの声。さあっと背筋の凍る感覚がしてそれに相まってさっきの声色がなんとも冷めていて、取りあえず溢れた「ごめんなさい」は空回ってずん、と布団の重力が増す。
縫うみたいに右手首が沈んで、さっき咄嗟に出した左手も内を向いて縫いつく。仰いだままの指を関節からつう、と赤い舌が撫でる。撫でながらマサキは言う「名前は、何してたんだよ?」それはひどく扇情的で、香りや空間じゃなく本物だ、と高鳴る。
スリルが堪らない性癖なんです?マサキの部屋に欲情しました?ちがう、ええと、違わないかもしれない。でも頭で考えた理屈は言葉にならなくて「マサキ、さわって」答えにならないままの答えに返ってくるのも当然噛みつくような勢いあるキスで、答えにはならなかった。
マサキは噛み癖があるみたいで、もう消えてしまった首や鎖骨やに、俺のと印をちくちくつけていく。生乾きの髪が触れて焦れる。焦れったさに名前を呼ぶと申し訳程度に乳首を舌先でつついていくから、首に手をまわすと楽しそうに口角をあげてごめんごめんとキスを落とす。とことん意地が悪いのにときめく私も大概だけれど、わかってかわからずか「で、どこ」にこにこするだけで動かない。

「下、わかってる…くせに」
「こう?」
「ひゃぅ、ちが、」

仰向けのまま下腹部を包むように押されて壁が陰核をじりじり擦っていく。耐えられないと膝を立てて「こっち…」誘えば「淫乱」ぽそりと言われた言葉に哀しいかな脈は加速する。

「あっあっ、やっ…あ…んっ」
「濡れすぎててあれなんだけど……いいよな」

頷くと同時に入り口に宛がわれる。ゆるゆると侵入すると思いきや「ほらすぐ入った」言いながら一度打ち付けながら多分イタズラ心から核をきゅっと潰される瞬間「あっ俺まだなのに」マサキの声をうすく聴きながらあっけなく達してしまって、すぐに律動を始めるマサキにここで初めて本気でごめん、そう思った。





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