興味がないと言ってしまったら嘘になる。
憧れ?と言ってしまうのはどうなのかな、ってくらいだけどなんというか、少しだけ大人になった気がするからいいなとは思う。でも痛そう。そう、痛そうだから怖くて私は踏み切れないでいる。

でも私がしたいと言うより前にお母さんが高校生なんだからすればいいのに、なんて私に話を持ち出すから昨夜からそれで頭がいっぱい。聞いてみようかな、どうだったのか。

思い立ってすぐではないけれど、明日聞いてみよう、そう思って今日を迎えた。

立っている間は下を向いたら絶対に見かけられないきんいろ。高すぎる。
でも彼は毎日私を家の近くまで迎えに来てくれる。だから必ず会える。代わりに私は朝練の時間に合わせなければだけど。頭の中で高校生はあんなに素敵な人とお付き合いできるんだよ、なんて昨日聞いた言葉にあやかってみたりして。
私が家は恥ずかしいよって言ったら笑いながら「じゃあその前の曲がったとこ行くっス」そう言った場所。


「おはよーっス!」
「おはよ、黄瀬くん」


「今日も可愛い」なんて挨拶のあとちゃちゃをいれられる。その時頭をまぜていくのは髪が崩れるから気になるけど。でも嬉しいからいいや、なんて思う一日の始まり。
今日の私はそれに満足してる場合じゃなかった。聞かなきゃ。
うん、と首を縦に振って話題を振る。


「ね、黄瀬くん。耳…痛かった?」
「耳?ああ、ピアスね。そーでもなかったっスよ?」


へえ、なんて感心して黄瀬くんの表情を盗みみればどっかよくわかんないとこを見て話してた。痛かったんだ。
嘘がかわいくて笑いそうになったけど、やっぱり痛いのかあなんて少しだけ不安になったりする。


「開けるんスか?俺開けたい!」

「開けるって…私の?」
「うん。だって開けるんでしょ?だったら俺やったげたいっス」
「痛くない?」
「ほんと平気っスからー」
「なんか黄瀬くん楽しそうだね」
「そりゃそーっスよ、もう…や、なんでもないっス」


なんて急に黄瀬くんはもごもごし出した。それが気になったけど、前よりずっと開けてみたくなった私が居ることにびっくりしながら学校に向かった。
今日の帰り、買って帰ろうかな。
時間空くとどうせ迷うし。
じゃあ行ってくるっス、学校についてそう言う黄瀬くんを呼び止めて「今日帰り、ピアッサー選んでもらっていい…?」って言ったら「まかせて!」そう言って黄瀬くんは手をぶんぶん振りながら体育館へ向かって行った。





決戦は私の部屋。
黄瀬くんが来るのが二度目のこの場所できらりと尖端が光る。
ぎゅうと握られた手の傍らで私の気持ちをつくつく刺してる。
消毒も済んで準備万端、今さらになってやっぱり怖い。


「やっぱり怖いよ」
「今更。だーいじょーぶっスよ。俺器用なんスから」
「針痛そうだもん」


空いたままの手できゅっと黄瀬くんのブレザーの裾を掴む。そんな私に黄瀬くんはふっと笑って「しょーがないっスねえ…」ピアッサーを近くのミニテーブルに置いた音がして、くしゃりと頭を撫でられたと思ったら私のそれはぐっと前に傾いてぎゅうと抱き抱えられる形。
あったかい、そう思えば恥ずかしさと安心感でまぜこぜになった気持ちで溢れる。
とくとくと聴こえる心音と一緒に「俺、思ったんスよ。片方だけ開けようとしてるでしょ」少しいじわるな声が聴こえる。


「どうせ、なら黄瀬くんと一緒が……いいなって」
「ふふ、やっぱり。嬉しくてどうにかなりそうなんスよ?さっきから」
「怖いって言ってばっかりでごめんね」
「体に穴開くの、怖くてトーゼンっス。でも、」


少し緩まった腕に続けて名前を呼ばれて、近いとわかってながら顔を上げたら、予想より近い黄瀬くんと私の距離からちゅ、と鳴る音。
かあ、とわかるくらいに染まる私の顔が、
歪む。
一緒に聞こえた、がちゃって、音。


「…ハイ、消毒も出来たっス。暫くこれつけるんスよ!」
「痛かったよ、ねえ、嘘ついたでしょ」
「でも思ったよりすぐだったんじゃないスか?それに、気…それたっスよね?」
「……ありがとです」


思い起こせばキスの後特有の気恥ずかしさと、穴開いたんだなんて少しだけ大人になった気分と。少しだけまだ感じる痛み。
気持ち涙で歪む視界で黄瀬くんが鞄をあさりだして、取り出したものをこそこそといじる。


「……?」
「はいっス!」


あげる!と私に差し出したのは一つの小振りな黄色いピアス。黄瀬くんが良くしてるやつみたいな形をしたものだった。私に?見れば台紙がついている。私に買ってくれてたんだ。でも、片方だけ?


「取れてるよ?確かに私片方だけしか開けなかったけど…」
「あー、ここっス。見て見てお揃い!」


片割れのピアスは黄瀬くんの耳で光っている。私は嬉しさでいっぱいで、痛みはとうに忘れていた。
思うのはひとつ、早く私もつけられますように。それだけ。
「ありがとう」そう言ったら「早くつけられるようになんないスかね、明日とか」黄瀬くんも同じこと考えていて、ことさら倖せで溢れた。








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