一体誰だ。春は暖かいなんて、春には冬眠した動物たちが活動し始めるなんて、あたしに教えたのは一体誰なんだ。
三月も末、もういい加減春だろうとあたしは思っているのに一向に気温は暖かくならない。
むしろこれでもかと言うくらいにあたしに徹底的に冷気をプレゼントしてくれている。
こんな夜は寝て寒さを忘れたいのに、決まって寒さというやつは目を冴えさせる。
一か八か。
こんなときは友達がよくやるリアルとかいうやつを更新すればいいんだろうけど、こじゃれた機能はサッパリで手の付け方がわからなかった。だからあたしはメールしかないな、と。電話はきっと相手が寝ている可能性があるから、あとは出てくれなかったときが切ないからパス。
「ねえ、寒い、ん、だけど……っと」
かち、かちかちり。それだけの本文、タイトルは無し。自然とアドレス帳から一人を選ぶ。寝ているだろうけど。
――送信しました
その文字を見てふうと一息。
携帯をたたんでぽいと投げ出す。いやあ来るわけないよなあと我ながら思う相手に送ったんだし。
寒さ対策を地道に考えよう、と思った瞬間ぴかりと緑が光った。
まさか、とごそりと携帯を探して表示を見ればそこにはさっきメールした相手の名前。
――青峰大輝
件名はRe:とだけなっていて、本文には「そっくりそのまま言葉返す」とだけ。なんだあいつ、防寒対策とか…いや、ないか青峰だし。
返信、と……画面をよくみればスクロールバーが右で主張していた。
「雪降ってるぜ。窓から見てみろよ積もってる」しばらく下に追記してある。
「は、雪?」
だから寒いのかとベッドからむくりと起き上がり(寒いから布団はかぶった)窓を覆うカーテンをざっと避ける。
見上げた空に白は見えない。
積もってると言われたアスファルトには、青。……青?
ぶんぶんと手を振る青峰がそこには居て、「降りてこいよ名前」とその口は動いていた。
そりゃあ寒いよ青峰。