じめりじめりじめじめ。
夏も始まったばかりだというのに容赦なく照りつけ、部屋を蒸し、やる気を削ぎ、なんかもう動きたくなくならせてくる。
俺は悪くない。ちいいいっとも悪くない。申し訳程度にごうごう回る扇風機もがらんと開いた障子もちりちり音する風鈴も、なーんも俺の味方になってはくれない。
生きれば生きるほど鬱陶しくなって、動こうとすればするほど俺を否定する。

「あっっついわお天道ボケェ…」

足元に転がる携帯をちょいと寄せてショートカット、3。通話。


「もしもし?」
「名前、アイス買うて」
「は?何言ってんの金「氷系」

ぶちり。PWRの文字の入ったボタンをよろしく代わりに、ああ時間制限するん忘れたわ、後悔すらどうだってよかった。




しばらくすると縁側からゆらりと陰がかかった。頭すらあげたくない俺は「遅い」言うや否やごつんとビニール袋が降った。

「なにさせんねんドアホ」
「暑いんや」
「私かて暑いわ!」

どかりと座る名前に習って座り直して袋を漁る。やっすいカップ氷が2つ入ったそこから宇治のやつを抜き取ったら「金造はこっちやて」と言って10円安いレモン勧めて来たからさっさとフタ外して宇治舐めてやった。俺のや。

「うっわガキくさ」
「言うてろ」

がっつがっつ表面を荒らして掻き込めどこめかみに響きやしない。けど、マシになってきた。納得行かなそうに名前がつついてる。

「金やからってレモン食わんぞ」
「ガキはそんくらいがお似合いですー」

「ちゅーてもお前、金時やから宇治買ってきたくせしおって」
「……やかまし」

「わっかりやす」
「あんたに言われたないわ」







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