倖せな夢を見た。名前がキスをしてくれる夢。僕はそれまで試合をしていて、終わったらお疲れさまってキスをしてくれる夢。
…名前に会いたいな、このまま、会えないのは、

「……ん、だれ…名前…?」
「太陽、お疲れ様」
「僕…負けちゃった。ごめん」
「次勝てばいいよ、ね?」
「…名前は僕がサッカーするの嫌なんじゃ、なかったの?」

意を決して訊いてみる。このまま嫌われたくなかった。サッカーだってまだまだしたい、だけど、名前とだって一緒に居たい。気づいたんだ。だから知りたい。名前が本当はどう思っているのか、どんな気持ちでいたのか。

「ごめんなさい。ずっと一緒に居たかっただけなの。サッカーして、太陽が居なくなっちゃったらって怖かった…太陽はサッカー出来ないなら死んだのと同じかもしれない。けど、私は太陽が本当に死んじゃったら…生きていても意味がないの…」
「名前…」
「どっか行っちゃやだ、死んじゃやだ、サッカーしないでってずっと言いたかった。言えなかった……太陽がサッカーすきだから、嬉しそうにしてる太陽がすきだから、言えなかった」

安静にしてろって時かもしれない、けど気にしてる場合じゃなかった。苦しんでた。名前はずっと苦しんで、僕は、気づけなくて。
身体を起き上がらせて、寝かせようとする名前を抱きしめる。苦しくなるくらいきつくきつく、抱きしめる。足りないんだこんなんじゃ足りない。名前が苦しかった大きさに、僕が名前を想う愛しさに。

「ねえ名前……僕、生きたい。僕が僕のためにサッカーしたいことは変わらないけど、僕は。名前のために生きていたい。名前と一緒に居たい……君が、だいすきだから」

ありがとう、そう上擦った声で呟く名前の唇に噛みつくようにキスをする。夢の中で名前がしてくれたキスはやさしかったけど、ありがとうは僕の方、そんな気持ちが伝わりますように。


Fin.





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