それから私は太陽を避けるようになった。病院には自然と足が向いてしまっても、先生や冬花さんに体調を聞くだけで帰るようになった。太陽の邪魔をしたくないから、とでもいえばきっと聞こえはいい、たとえば命より大切なものはないとか大層なことも言うつもりは無くて、ただ太陽の側に居たいだけが本音の私が憎らしくて太陽に見せたくなかった。見せられない。試合に出ないでずっと側にいて、病院でだっていいから。なんて。そんなの太陽が望むわけなかった。
今だって病院にはいるものの、ベンチに座っているだけ。一階の、太陽が訪れることはきっとないベンチに。かつかつ鳴ったヒールの音は冬花さんのものだった。隣にすとん、冬花さんは腰を下ろした。

「名前ちゃん、今日も会って行かないの?」
「……会えないです」
「会えない、か…」

ぽつり、呟いたあとで頭にふわっとした感触。ぽんぽん、冬花さんの手のひらから温もりが伝わる。繰り返してそのまま冬花さんは話し出した。

「前に言ったことがあると思うけどね、恋人は特別なの。どうしてかわかるかな」
「……?」
「甘えていいの。頑張れ、だけじゃない、頑張らないでって言ってもいいからなの」

それでも太陽くんに会えない?私を見ながら言って、私は言葉がうまくでなくて頭を振る。太陽に会いたい。会いたいの。少しでも長く、太陽と居たい。太陽を見てたい。だから。

「ひ、太陽にっ……無理して、う、ほしく、ないの……ひん、一緒にいたいん、です…ずっと…」
「うん」
「…太陽しか、ないんです」
「うん」
「今の、私には…太陽がっ」

すべてで。言葉になるより先に溢れる涙が止まらなくて、うん、うん、って言いながらそれでも冬花さんはずっと聞いてくれていた。
明日は太陽に会うために病院に行こう。誰かに引っ張って貰ってでも、押されてでも太陽の病室の扉をノックしよう。撫でられながらそう誓った。

だけど私が病室に入ることはそれきり、無かった。






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