結局昨日太陽には会いに行かなかった。階段で会った冬花さんに何かあったのか聞かれて「太陽には会ってません」そう答えて帰った。赤らんだ目元に対して訊いただろう答えになってないのに冬花さんは「そう。気を付けて帰ってね」微笑んで言った。私も冬花さんみたいに優しくて強い人になりたいってふと思った。


「太陽、入っていい?」

返事はなかった。寝てたら帰ろう、ドアをがらりと開けてカーテンの近くから見たベッドには太陽の姿はなくて、嫌な予感がする。タンスの上にはちまりと黒い台が置かれているだけ。中庭の自動ドアが開いてベンチの横、とん、とん、音がする。耳馴染みのある、リフティングの音。

「やっぱりここにいた」
「わっ…びっくりした」

聞いてよ名前、太陽に名前を呼ばれた後とんでもない言葉が聞こえた。

「僕、次の試合に出られるんだ!」

嘘、嘘だと言ってよ。

「身体は大丈夫なの?」
「僕は、やるよ。サッカーやるんだ。誰になんと言われても」

きり、と向けられた視線は有無を言わせない、太陽の意思。サッカーへの情熱。試合にかける、覚悟。

「……無理はしないようにね」
「名前の頼みでも今回は聞けない。今しか…ないんだ」

私は言えなかった。
試合に出ないでなんて、サッカーしないでなんて、とても言えなかった。






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -