太陽のお見舞いに行くのが日課で、よほど太陽の調子が悪くないときはお医者さんも冬花さんも面会を許してくれた。手術を受けてもらうために少しでも生きる活力が湧くように、そんな理由を冬花さんに教えてもらったことがある。家族や恋人は特別だと思う、その意見を冬花さんが言ってくれたらしい。太陽に会わせてもらえるのは嬉しい。だけど、太陽の薬になるのはやっぱり、サッカーだった。
病室から声がして、先客がいたみたいだった。出直そうと中庭に行ったら、同じ階の剣城さんがいた。

「こんにちは」
「やあ、今日も太陽くんのお見舞いに来たの?」
「はい。でも誰か来てるみたいで、時間を置こうかなって」
「誰だろう…天馬くんかな」
「テンマ…さん?」

知らない名前だ。病院で出来た友達かな、太陽よく抜け出すし。

「あ、弟のチームメイトでね。俺のお見舞いに来たときに太陽くんと友達になったみたいで」
「ってことはサッカーする子なんですね。……太陽、一緒にしたいだろうなぁ」
「はは、させたくないって顔をしてる」

笑いながら剣城さんは言った。その通りだった。不思議と涙が出てきた。心配で心配でしょうがない、太陽が仲良くなるなんてサッカーをした証拠だった。今日もしその子が来てるならこれから抜け出そうとするだろうしあるいはもうしてるかもしれない、サッカーさせてあげたい、サッカーしてほしくない。ただただぽろぽろ泣く私に剣城さんは「太陽くんのことを思うならどうか怒らないでやってくれ。つらくなったら俺にでも愚痴を溢してくれていいから」それは剣城さんだから言えることだった。サッカーの出来ない剣城さんだから。サッカーのだいすきな剣城さんだから。彼らにはサッカーしかないってわかってるはずなのに、どうしても私には太陽が。





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