私の大切な人はサッカーがだいすきな人だ。寝るよりも食べるよりもサッカーを優先する人だ。サッカーバカも度を越したサッカーバカだ。でもすきなだけじゃない、ちゃんと元より才能がある。努力の出来る才能もある。神様は二物を与えてくれた。頑張りにセンスが合わさった結果が十年に一人の天才、みたいに中学サッカー界で呼ばれ始めた異名だった。私はそんな太陽を見ているのがすきだった。

「入るよ、太陽」
「あ、名前。ねえ、冬花さん見た?」
「見たよ?下で」

太陽はベッドの脇に手を伸ばして喜んだ「やった」あ、ボール探してる。中庭でサッカーする気だ。ぱっとボールを胸元に持ってきらきら見つめる太陽からボールを奪い取って「大人しくしてなきゃだめだよ」タンスの上の台に置く。
太陽は頭の後ろで腕を組んで「ちぇ、名前まで冬花さんみたいだ」言った。つまらなそうに言った。太陽ごめんね、元気なときなら少しくらいって思ってるんだよ本当は。私だって太陽がサッカーしてるとこすきだし、太陽がすきだからすきなことさせてあげたい。でも、太陽が苦しそうにしているとこが見たくなくて。太陽が居なくなってしまうのが嫌で。太陽はサッカーが出来ないなら死んだと同じだって言う。私は違う、太陽が生きてさえいればいい、こうやって話が出来ればそれでいい、たとえサッカーをしていなくなって私はそれでいい。ごめんね太陽、わがままでごめんね。
私の大切な人はサッカーがだいすきだ。神様にサッカーをするための才能を与えられた選手だ。
神様にサッカーが出来ない病気を与えられた選手だ。






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