私は支えるだけ。それしかないのに今となってはそれすらも出来てたのかわかんない。だから呆然とフィールドに立つみんなを見るだけしか出来ないし、戦うどころか祈るだけ。悔しさもなにも彼ら以上にわかるわけない。泣くことは許されないと思ったし、だからがんばったねだとか、次があるよだとか慰めの言葉も私には言えることじゃない。
初戦、敗退。
無言で控室にぞろぞろと帰る選手のみんなと監督(笑顔が余計に怖い)を目で追うのもそこそこに、ベンチに残ったタオルやドリンクを片付けてのろのろと後を追う。やっぱり中には入りたくなくて、控え室を過ぎて流しまで。酷い顔をしてる。私を容赦なく映す鏡は申し訳程度に前髪を目元までたらして、眉を下げて、まばたきばかりのうるんだ目をした私を、奥歯が軋みそうなくらい真一文字に唇を結んだそんな顔をただただ視界にちらつかせる。
負けたことが悔しい。頑張りを見てきたはずだったのに。でもプレイしたわけじゃないからみんな泣いてもいないのにおこがましい、とか。ここなら誰もいないんじゃないか、まだみんなは出てこないんじゃないか、思った瞬間、だった。

「苗字。悪かった、な」

閑静な廊下に低い声が、聞き慣れた声が、振り返らなくてもわかる声が。隼総、だ。来ないでほしい。泣きそうだから。隼総だけはダメだと思った。シードの隼総が一番悔しくて負けたのを信じられなくて、憶測でしかないけど多分フィフスセクターに怒られて、あと、もしかしたらだけど。天河原やめさせられちゃう可能性があるんじゃないかって。
顔を下げてあげられないままの私に隼総が近づいてくる。鏡に艶やかな紫が入り込む。

「喜多は、へこんでたりさすがにしてっけど……西野空とか案外普通だし、まあ、遠慮すんなって。なあ」

肩に触れられてびくりと揺れる。つられて隼総の指が驚いて、それでもぐいと力が入って後ろへふらつく。私はその間も徹底して上は向かなかった。床が濡れた。と思ったのに。ごめん。私何も出来なくて。隼総が辞めさせられたら嫌なのが私自身でごめん。隼総のユニフォーム、汚してごめん。




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