「その日はちゃんと病院来てね」

めったに来てほしいと言わない太陽が随分と前から来てほしいと念を押す日があった。私が週に何回も足繁く通うからかもしれない、太陽から来てほしいと言うことは本当に珍しいことだった。私は理由を知っているから気恥ずかしくて絶対来るとは決まって言わないでいたし、なんのことだかわからないふりをし続けた。誕生日に会いたいと言われて嬉しくないわけがないっていうのに。浮かれているばかりに太陽がだんだんと不安そうに訊くのもしらないで。
あまりにも濁すものだからついには冬花さんにまで「明日、来てあげてほしいな」って言われる始末、言いづらい。だけど太陽に言うよりましかと「あの、なんか、浮かれてるの太陽に見られるのが嫌だったって感じなので…来ます」言い終わってから見た冬花さんは微笑んで「よかった」言った。こんな大人の余裕が私にもあればよかったのに。

太陽をびっくりさせよう、なんて名目で誕生日までの三日間私は病院に行かなかった。それから誕生日、珍しく受付の近くに居た冬花さんにつかまって「ちょっと一緒に来て」連れてかれた先は太陽の部屋じゃなくて空き部屋?だった。太陽調子悪いのかな、いやな予感がする。表情に不安を残したまま冬花さんを見上げる。すると同じように眉を下げて「よかった」と言った。最後に聞いたそれとは違ったけれど心配したようなのは杞憂だったと気づいてほっとした。

「太陽、どうしてますか?」
「もうあなたが来てくれるか来てくれるかって大変だったんですからね。誕生日おめでとう」

と言って笑顔で紙袋を差し出してくる。てかりの入った真っ白の袋。

「えと、冬花さんにまでプレゼント貰うなんて思ってなかったです…ありがとうございます」
「違うの。太陽くんからよ。これ着て一緒にいきましょ」

着る?袋口を開けば綺麗な白の、あれ、これ、記憶がおかしくなければ。

「冬花さん、これっ」

動揺もそのままに「手伝ってあげるから早く行かなきゃ、ね?」あれよと着替えさせられてしまって、階段は危ないからとエレベーターで太陽の部屋に向かうと深呼吸する間もなくコンコン、冬花さんがしたノックに「はーい」と太陽が答える。

「私です。ちゃんと来てくれたわよ」
「本当?」

その声がしたと思ったらガラリ、内側からドアが開いて「太陽、ごめんね?」言おうとしたらそこに居た太陽はいつもみたいに水色のパジャマじゃなくて、まっしろなシャツにぴしっとしたスーツっていうか、やっぱり、結婚式みたいだ。
そこまでやっと頭が回って気づいたら太陽に抱き締められていて「似合ってるね」嬉しそうに言ったと思ってたら「来てくれなかったらどうしようかと思ったよ?」拗ねたように寂しそうに言った。
それを見てた冬花さんが「ほら、お祝い言わなきゃだめよ太陽くん」言ったのを合図に真横から太陽の頭が退いて見つめ合う形になる。こそばゆい。それまで眉を下げていた表情は変わってにこ、爽やかに笑ってみせて「生まれてきてありがとう」言うからこちらこそありがとう、言おうと思ったらまた頭の横に太陽の髪が掠めて「ねえ、愛してる、って言ってもいい?」もうそれからは倖せすぎてなにがなんだか。


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