「ねえ、ヒロトは運命って信じる?」いつも突拍子がなくて思ったまま思ったことを言うタイプだった名前のことだから驚きはしなかった。運命を信じるか、か。

「信じきるわけじゃないけど確かにある…かな」
「ふうん、よくわからないね」
「運命だからどうだってわけじゃなくて、ああこれが運命だったんだなっていうか…難しい?」

なんとなくわかるよ、と名前は口を尖らせる。わかってないのに俺にばかにされたような気がして見栄をはっているような。それにしても運命か、たしかに名前と出逢えたことが運命だったとか運命の相手だったから惹かれ合ったんだねだなんて口にするのは簡単だ。だけど名前の求めてるのはそれじゃない、下心からじゃなくて純粋に気になって仕方がないから俺に訊いた。そもそも運命、そうだな中学生のころだったら円堂くんや皆に出会えてから俺自身がサッカーを出来たことだとか父さんがいずれ居なくなってしまうことだとか…嬉しかったことや悲しかったことそれを運命だとか運命だっただとか言ったのかな。
でもそれをばかの二つ覚えのように運命の一言で括ってしまうのはなんだか違う気がして。違うんだ、決まっていた結末みたいなものでなくて。ええと。

「…ヒロト?紅茶冷めちゃうよ」
「え?ああごめん。折角淹れてくれたのにね」

カップに手をそえようとしたとき「あのね」名前が手元のカップを見ながら言った。

「合ってるかわかんないよ、わかんないけど…ヒロトのことはちゃんと自分で見つけて選んだの。ね、だから誰かに出逢わされたんじゃないよ」

なるほど俺が考えてる間に名前も考えて俺の言ったことに答えを出したってことか。運命は誰かに決められたって意味じゃなくて自分でそうなったかたち、ってことなのかな。気づいたら俺の方が気になっているみたいでとうにすっきりしたふうに紅茶を流し込む名前を見てようやく俺は水面を揺らした。


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