「晴矢、晴矢、はやくはやく!もっときゅいーんって」
「んな急かすんじゃねえよ!しかもきゅいーんとか鳴んねえし」

キコキコ、カラカラって車輪の音に混じったあたしたちの声。もっと言えば他にはなんの音もなくてまるでいまここだけ切り取られたみたいだった。

「…なーそろそろ」
「お疲れさまっ、じゃあ今度はあたしの番だね」

難関の上り坂をふたり乗りでやっとこさ登り終えて晴矢はぜえぜえ言ってる。ここほんと急な上長いんだよね、やっぱり降りてればよかったかな。
家から持ち出したビニールのシートを鞄から出して広げてその上にさっきコンビニで買ったお菓子をばらばらってのせる。
ここは星が綺麗だからって、ちいさいときから毎年ふたりで見に来てるんだ。

「今年もぴかぴかだね」
「おー、俺もあんくらい燃えるぜ」
「そろそろ頑張ってくれなきゃ困るよねー」
「おい名前どういう意味だっつの、頑張ってんだろ」
「…うん、知ってる」

あー、じゃあよ、と晴矢があたしの方を向いて言い出したからなにごとかと思えばひとこと。

「俺が輝いてんの見逃さねえように、ちゃんと俺だけ見とけ」

そしてシートの上のあたしの左手をぎゅっと握った。
伝わる熱はなぜかどんどんあがってきて自分の耳があったかくなってくのをすごく感じた。いつだって一番晴矢が輝いて見えてるのはまだ、晴矢には言わない。



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