無敵で素敵な

千夏は、今日も今日とてあいつに捕まっていた。
そう、あいつに。
「やぁ千夏ちゃん、今日も可愛いね」
「うるさいです、折原さん黙ってください」

そう、折原臨也に。

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始めて出会ったのは約一年前。
始めて来た池袋に、どこがどこだかわからず、右往左往していたところを、助けていただいた。それから良く池袋で会い、その都度その都度助けられていた。
優しそうな人だなぁ、かっこいいなぁ、なんて思っていた。
けれど、そんなある日。
「いぃーざぁーやぁーくんよぉー!殺す!」
「何いってるのシズちゃん、シズちゃんのほうが死んでよ」
目の前で自販機や道路標識が飛び交う中を銀色に光るナイフを持ってのらりくらりと躱して行く姿を見て絶句したのは、記憶に新しい。驚きで言葉もでないと言うのはこう言うことか、と現実逃避したものだ。できれば封印したかった記憶を思い出してしまい、頭が疼いた。
はぁ、とため息をつけば、目の前で抹茶のフラペチーノホイップ増量のチョコチップとチョコソース追加(なんという女子力)を飲んでいたおりはは、臨也さんはにっこりと笑った。くそ、イケメンめ、何しても似合う。
「なに千夏ちゃん、ため息が出るほど俺かっこ良かった?」
「なんでいんの」
「酷いなぁ、千夏ちゃんに会いに来ただけなのに」
「うざ。街行く人間観察してなよ」
「してるじゃん、千夏の観察」
「平和島さん殺してこれば?」
そういうと、周りに座っていた人たちは一瞬動きを止めた。大変なことを言っているのは重々承知しています。はい。
それに臨也さんは眉を顰めて、大げさに肩を竦めた。
「シズちゃんと遊んでもつまんないじゃん!だいたい化け物だし!単細胞!騙されやすい!いいかい?俺は、シズちゃんが、大嫌いだ!大嫌いなシズちゃんといるより、千夏ちゃんといる方がいいの、断然いいの!人間だから!」
「…そうですか。ねぇ、臨也さん知ってます?嫌いの反対は無関心なんですよ。平和島さんのことが嫌いだったら気にはかけないでしょう?」
「ねぇ、それどんなフラグ立てろって言ってるの?」
「さぁ、どんなフラグでしょうね?少なくとも狩沢ちゃんはすごく喜ぶフラグだとおもうよ」
シフォンケーキをつついていたフォークでビシッとドヤ顔をして突きつければ、臨也さんはものすごく嫌そうな顔をした。はい、想定済み。
「あんな化け物と…?辞めてよ気持ち悪い。だいたい俺がシズちゃんを殺そうとしているのは、人間の社会に不要な物だからだよ!シズちゃんがいるから人間の均衡が崩れるんだよ!平和の為、だよ」
「そんなこと言って、その平和な人間たちの関係をぐちゃぐちゃに引っ掻き回して神様アターックとか言ってる人は誰ですか、ってか、神様、アタック…って…ふふ」
「ちょ、それ誰から聞いたの!?」
「波江」
「くそう、波江さんめ…」
恨めしそうに空を見つめた臨也さんを見て、ポツリと一言。
「まぁ、でも臨也さんといるのは悪くはないですよ」
ぐりん、とものすごい勢いで目がこちらに向いた。はっきり言って、怖い。
「ほんとかい?」
そんな嬉しそうな顔しないでください。
「うそです」
「そう…ねぇ千夏ちゃん」
「なんですか」
「俺は人間が好きなんだよ」
「そうですね。しってます」
「その中でも特に好きな人間がいるんだ」
「へぇ、」
「誰だと思う?」
「さぁ、あ、もしかして」
自分ですか?そう聞くと臨也さんはジトっとした目で見て来た。
「なんでそうなるんだよ。あのねぇ、俺が好きなのはーー」
ニヤリ、と笑って口を私の耳元まで持ってきた臨也さんは、腰が砕けそうなくらいえっろい声でいった。

「千夏ちゃん、だよ。千夏ちゃんが俺のことを好きなように、ね」

「……ずるいです」
「でしょ」
にっこり、とルビーのような赤い目が細められた。今の自分、すっごく顔が赤いんだろうな、なんて頭の中で冷静に考えてみる。
「なんで分かっちゃったんですか。私が臨也さんのこと好きって。」
きくと臨也さんはぽんぽんと私の頭を撫でた。
「だって俺、」




だれおま(´ω `)え。オリハライザヤ?人違いなんじゃ?