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「お待たせ〜ってあれ?不穏な空気かな?菜穂ちゃん帰っちゃうぞ?」
「帰えんな、つか1on1」
以前黒子が言った「やばい」体制、つまりジャージ姿でパタパタと走って戻ってきた菜穂はなにやら火花が散らかり終わる寸前の空気を見て逃げ出そうとしたが、
「ぐえっ、ちょっ、女子にそんな事するー?普通」
青峰にジャージの首根っこを掴まれながらズルズルと外へ引き出される菜穂は青峰に抗議をする。が、
「さぁ?しねーだろうな」
「なら離せこのアホ峰!」
「知るか」
「待って、会話成り立ってない!」
なんかやんやと言いくるめ(?)られて、渋々旅館の横につけてある駐車場の一角に設置されたストバスのコートへ連れてかれた。その後ろを黒子と火神は着いて行く。興味本位だ。
「じゃあ、ハンデ頂戴?」
ダムダムとボールを突く菜穂を見て、青峰はハッと笑う。
「んだよ、お前いんのかよ」
「あらひっどーい!ここにか弱い可愛らしい女子がいるのにハンデくれないのー?」
「寝言は寝て言え。オメー可愛いけどよぉ、か弱くねぇし、バスケも強いだろ」
パシ、と菜穂のパスを受けた青峰はケタケタと笑う。
「あら嬉しい、可愛いって認めてくれるのね。でもスパン一年だよ?その間に大輝が強くなってるんじゃ無いのかしら?」
今度は青峰がダムダムとボールを突く。
「ハッ、アメリカ行ってバスケしてた奴に言われたきゃねーよ!俺に勝てるのは俺だけだ!」
そのままドリブルで走り出す。
無駄の無い、洗練された動きに、火神は息を飲んだ。
「あいつ、やっぱすげぇ。ってか奥宮とも仲いいな」
「あぁ、今回も青峰くんの負けですね」
少し笑いながら黒子は言う。
「は?青峰負けんのか?」
「はい、先日菜穂にストバスで負けたのを目撃しましたので」
黒子はコートへ視線を固定させたまま、言った。
「へぇ…その言葉に男てはに加えた方がいいんじゃない?でもさ、そのドリブル、甘いよね。ってか私勉強にしに行っただけだし」
でもさ、大輝好きだよね、クロスオーバーのフェイクからの抜き。
そう菜穂は笑いながら青峰のスピードにあわせてボールをカットした。

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