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ダムダムとボールを突く音、キュッキュと床を鳴らすバッシュの音、篭る熱気。それを見て、少女は満足そうに微笑んだ。

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「ウィンターカップで有力なのは、まず海常高校。笠松幸男キャプテンの元、天才的なエース、黄瀬涼太がいる」
一人の男が発した言葉を、もう一人の青年が必死に聞き取り、持っていたメモに書き込む。そして、ふと気付く。
「あ、でもあれですよね、確か海常ってこないだ何処かに負けたんじゃ…」
それを聞いた男は、"あの"試合を思い出し、わずかに口角をあげた。
「桐皇学園にまけた。名勝負だった。天才、青峰大輝がいるからな」
「天才といえば、秀徳高校の…」
「緑間真太郎、恐ろしいシューターだ」
「彼らはみんな帝光中出身…キセキの世代ですね」
今までのメモを見て呟いた青年は、帝光中の全中三連覇のせんせきを思い出した。男は満足そうに笑った。
「そう、そしてキセキの世代にはあと二人。秋田の陽泉には紫原敦、京都の洛山には赤司征十郎がいる」
ふむ、と納得をした青年は口を開いた。
「じゃあ、その何処かが優勝って事で決まりですかね…」
しかし、男は眉を顰めた。
「そうとも言えん」
「え?」
男の視線は、試合中の誠凛の選手、木吉、日向、伊月、それから火神へと向かれる。
「木吉鉄平。膝を壊してIHには出られなかったが、優秀なセンターだ。主将の日向順平、クラッチシューター。イーグルアイを持つポイントガード、伊月俊。そして、キセキの世代と対等に渡りあった新人、火神大我」
試合終了を告げる笛が鳴った。スコアは72-65、誠凛の勝ちであった。
「覚えておけ、あれがウィンターカップのダークホース、誠凛高校バスケ部だ」
そういい、男は立ち去る。青年も慌てて後を追うように歩き始めるが、ある一点に目が留まる。
コートにいる、選手だ。
勝利を喜ぶ誠凛の選手の中で、今まで気づかなかった水色の髪が、さらりと揺れる。青年は、首を傾げた。
「あんな選手、いたっけ?」
………まぁ、いっか。
そのうち分かるだろうし。そう思って、青年は男と空いた距離を埋めるように走り出した。途中で一人の少女とすれ違ったことには、気づかなかった。
少女には、さっきの会話がばっちりと聞こえたらしい。少女はふふ、と笑みをこぼして、小さく「さすがテツヤ」と呟いた。

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