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「火神が…ゾーンに入った!」
小金井のその一言で、菜穂は意識をコートに戻した。
見ると火神が青峰との1no1でちょうどボールをカットしているところだった。
へなり、とからだから力が抜けて行くのを感じた。
「菜穂ちゃんっ!?大丈夫?」
「大丈夫、です。間に、合いましたね」
「え、間に合った、って…」
「火神くんって、大輝に似てるんですよ」
リコに支えられながら、菜穂は言った。
「似てる…?」
「えぇ、まっすぐなところも、バスケバカなところも、似てるんです」
だから、と菜穂は言葉を区切り、リコに支えられながらベンチに座る。心配そうに顔を覗き込んだ水戸部を見て、菜穂は手を握って笑う。その反応に納得した水戸部は、前を向いた。
「大輝はゾーンに入れたんだから、火神くんも…って。いつかいつかと待ってたんです」
青峰と火神、二人のエースが散らす火花は会場すべてを魅了し、永遠に続くかのように見えて、また、だれもがそう思った。
だけど、決着は、突然…
火神が青峰を抜いたことによって、ついた。

笛が鳴る。

火神に支えられながら、青峰と拳を合わせた黒子を見て、菜穂は意識を失った。

「菜穂ちゃんっ!」
「菜穂っ!」

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