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「揃ったか、ガキ共」
貸切になった旅館に相川を置いて、運動着に着替えて体育館に着けばそこにはリコ父、景虎が。
「カントクのお父さん!?」
小金井がびっくりしたように名前を呼べば、景虎は嫌そうに眉を顰めた。
「お父さんと呼ばれる筋合いはねぇ。景虎さんと呼べ」
「二日間、よろしくお願いしますね、景虎さん」
菜穂が挨拶をすれば、景虎の顔はデレっとなった。
「いや〜菜穂ちゃんはお父さんでいいよ〜どうだい?リコの妹にでもなるか?」
「ちょっとお父さん!菜穂ちゃんが妹なのは嬉しいけど話進めて!」
そう且つを入れると景虎は部員達に向き直った。
「景虎さん…が何でここに?」
勇気を出して福田が聞くと愛娘に頼まれてなぁ、と景虎は言う。
「お前らを強くしにやって来たって訳だ。で、早速一つ質問がある」
そう言ってどこからか黒光りするものを持ち出した景虎はカチャリとリボルバーを引く。
「昨日リコや菜穂ちゃんの裸覗いたやつぁ前に出ろぉ!」
なんかテッポウ出て来たー!!
と怯える部員達(黒子と木吉、伊月以外)はまさか昨日の晩に女風呂を覗こうとしてリコにビンタやらなにやら制裁を下された。などとは口が裂けても言えない。
「今なら楽に一発眉間ぶち抜いてやるぞガキ共、ゴルァ!」
い、いやぁ覗こうとしたけどリコさん、じゃなくて失敗したって言うか…と一生懸命に弁解しようとしている小金井にすがりつく日向の主犯2人組。
「リコの裸を見ていいのは俺だけ」
「ってんなわけあるかぁー!」
リコの投げたボールは景虎の頭に見事クリティカルヒットした。
そのすぐ後である。
「おい、お前達はまさかうちの可愛い妹に手を出してないだろうね?」
バン!と体育館のドアを開けて入って来たのはずいぶんと綺麗な顔立ちをした男であった。部員一同が困惑と少し恨みのこもった顔を向ける。それもそうだ。かなりのイケメンである。イケメンアイドルの溜まり場、ジュニーズと比べても謙遜が無い。だがしかし謎の男だ。妹、といっているあたり、誰かの兄だろう。しかしカントクは一人っ子のはず。だとすると…視線はゆっくりと菜穂に向かう。
菜穂は相田親子をのほほんとした様子で見ていたが、兄が現れ、慌て始める。が、しかし、部員達の関心はそこではなく、
「兄様!」
((おぉ!兄様!兄様って呼んだ!))
意外なところで菜穂のお嬢様の部分を見て感動するバスケ部(黒子除く)。
「どうしてここに?」
「父さんと母さんがが海外に商談と懇親会に出掛けててな。俺が一人で…と言っても使用人はいるが…家にいるのはつまらないだろ。ちょうどお祖父様からバスケ部がウィンターカップ出るって聞いたからさ、覗いてこようと思って」
いい人だ!この人いい事言った!けど!けども!
バスケ部の心は一つになる。
お前はどんだけシスコンなんだよ!
デレデレとした顔で菜穂に話しかける兄はそれはそれは見るに耐えられなかったらしい。
そこへ果敢にも黒子が話し掛ける。
「おはようございます。お兄さん」
声を掛けられた菜穂の兄、悠一は特に驚きもせず、黒子を見て破顔する。
「テツヤじゃないか」
くしゃくしゃと水色のサラサラとした髪を撫でる。
「お兄さん、大学は大丈夫ですか?」
「ん、あぁ、ほぼ遊びで行ってる様なものだし。最近はどちらかと言うと景虎さんのところにいるな」
そう言ってほら、と景虎のいる方を見る。そうだそうだと景虎もバシバシと悠の背中を叩く。
「坊ちゃんには世話になってらぁ…お、そうだ。おめーら、シャツを脱げ」
え、このタイミングで?ってか…
前にもこんなのあった…
黄昏る部員達。菜穂と悠一は哀れみの目を向けた。

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