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夜は明け、次の日。
「よし、全員揃ったな」
そう問いかけた日向に答える部員と2号。
「あの、朝からずっと火神くんがいません。あとそれから、菜穂も」
そう言って手を挙げた黒子を見て、日向は驚く。
「やっぱひでぇ寝癖!」
「火神が、いない?奥宮も?」
困ったような顔で土田も言う。普段より逆の立場になり、火神を探す黒子。
「いいのよ。菜穂ちゃんはここにいるし」
そう言って旅館を出て来たリコの後には少し眠そうに目をこする菜穂が付いて来た。後ろにはピシッとスーツで決めている好青年が立っている。
「奥宮さん、その人は?」
見慣れない人物を指差した福田を見て、菜穂はあぁ、と頷いた。
「私の執事の相川よ」
「皆様おはようございます。わたくし、菜穂様に執事をしております、相川です。外泊中は菜穂様におつきになりますので、以後お見知りおきを」
ほぅほぅ、と関心している部員を見て、リコが静かに、と嗜める。
「今日からしばらく火神抜きで練習よ。訳はあとで話すわ」
そうか、と納得する人もいれば、ん?と言うように不思議で頭をかしげる人もいた。
「よし、んじゃ帰るぞ」
「ちょっと、どこ行くつもり?」
不思議そうな声でリコが尋ねた。
「え?」
「このまま始めるわよー。合宿」
『何ぃー!?』
愕然とする部活達をよそに爆弾発言を落としたリコは笑っていた。
「菜穂ちゃんがさー、今宿の前にある体育館の使用許可と宿の宿泊延長届けを出してくれてね〜」
お金は後でちゃんと返すわ〜と申し訳なさそうに言うリコに旅館から出てきた菜穂はいえ、と返す。
「私のわがままです。桐皇の皆様とは帰りたくなかったので」
その一言にあぁ…全員がと納得する。
あの後菜穂は再戦を望む青峰、それから一番しつこく絡んでくる今吉(酔っ払ったおっさんのテンションだった)にうんざりしていた。
桐皇も一泊していたので、これから帰りで会うって考えちゃうと…とぶるりと震える菜穂を見て、何人かが哀れみの言葉をかけた。

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