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「久しぶり、ね」
「おぉ、久しぶり。ってかお前、どこ行ってたんだよ。夏休み明けたら居なくなってるし、テツは部活辞めるし」
「僕が部活辞めようが辞めまいが青峰くんには関係無いじゃないですか」
どこか暗い顔で起き上がった黒子は言う。
「ん、テツヤの言う通り。ちなみに私アメリカ行ってた。」
「アメリカ!?んで、だから大っきくなってんのか…?」
目測で…お前、Eだろ。
「シネ、大輝。何であんた達は揃いも揃ってその話をする!」
「んだよ、さつきにも言われたのかよ。ってか1on1付き合え。」
相も変わらず負けず嫌いらしい。今日こそはお前の無敗記録を破ってやる。そう言われているようで、クスと笑って菜穂は両手をあげた。
「こうさーん!じゃあ着替えてくるから待っててね…」
ゆっくりとした足取りで菜穂は立ち去って行く。それを見届けて、青峰は黒子に話しかける。
「試合見たぜ。あれが、さつきの言ってた新技か」
「はい。青峰くん達と戦う為の」
はっ、悪ぃが無駄だ。
「ウィンターカップで勝つのは俺」
「俺達だ」
青峰の言葉を遮って、スポドリを買ってきた火神は青峰の肩を組んで青峰の間違いを正し、睨む。
「気安く肩組んでんじゃねーよ」
嫌そうに、青峰は手を振り払う。
「火神くん」
「何やってんだよ、こんなとこで」
ほらよ、スポドリ。
丁寧に蓋まで開けて黒子の横に置いたのを見て、青峰は薄ら笑う。
「勝つのは俺達か…足りねーな。もっとだ」
先程自販で買った炭酸の缶をベンチに置いた青峰は火神を眺める。
「どうやら扉を開けたのは本当らしいが、入り口に立っただけだ。お前は俺たち、キセキの世代には遠く及ばねーよ。その程度じゃまだ楽しめねぇな。」
(何を言って…)
火神は扉だとかなんとか言われているが、さっぱり分からなかった。
あ、そーやさ、
何かを思い出した青峰は、二人に向かって言い放つ。
「ウィンターカップ初戦の相手は、俺だ。」
目を見開く。驚きで言葉や失ってるわけでは無い。なぜ初戦が桐皇なのか、と悲しみにくれているわけでも無い。
『首洗って待ってろ!』
キャプテンとカントクの声が聞こえたような気がした。今は不思議と気持ちが昂ぶっている。不得意のシュートでも、どんどん入ってしまうのではないか。黒子はそう考えて、おかしくなって笑った。
「ふっ」
「ん?」
それに青峰が反応した。
「すみません、火神くん。実は今僕、やったって思っちゃいました」
そう言われて、火神は少し目を見開いて、笑った。
「ハッ、何言ってんだバーカ。そんなのみんな思ったに決まってんだろ。」
そう言って、青峰野置いた缶を取り上げた。
「はなから楽に勝てるなんてさらさら思ってねーよ。それよか勝ち進めば、どーせ遅かれ早かれやることになるんだ」
グシャグシャと、缶は火神の手の内で形を変える。
「借りは早く返すに越したことねぇぜ」
「いいぜ。受けてやる 」
ニヤリ、と青峰は笑った。

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