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「えーと、三番出口、三番出口はっと…うん?」
「後ろを向け」
そう言われて後ろを向くと、灰色のブレザーとぶつかった。
「うわっぷ」
「大丈夫か?」
「…うん、久しぶりだね、征」
「あぁ、久しいな」
わざわざ中まで入ってきて探しに来てくれてありがとう。
これくらいどうってことないよ。それより、
「綺麗になったな」
自然と伸びた手は菜穂の前髪を掻きあげた。額に、唇が落とされる。
「ばか」
両手で赤司の頬を挟んだ菜穂は、そう言って、くるりと振り返った。
「ほら、行くよ。京都案内してくれるんでしょ?美味しい湯豆腐屋にも連れてってもらえるんでしょ?」
「あぁ、楽しみにしておくといいよ」
赤色と金色の目が、すぅ、と細められ、慈しむような眼差しが、隣でたのしそうに笑う菜穂に注がれた。

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