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「おぉ、だいぶうまくなったな、左」
左手で器用にくるくるとボールを回す火神を見て、降旗は感嘆の声を漏らした。
「まぁ、最近じゃ飯もこっちの方が食いやすいくらいだ」
ふぅん、まぁ、それは置いといて、と降旗は半目になる。
「んで、やっぱ大会前日はねれないのな…こえーよ」
試合前日に火神の目が真っ赤に充血しているのはもはや恒例と化してきた。
そしてその近くで、木吉は菩薩様並みのありがたい笑みをこぼしていた。
「んだよさっきからニヤニヤして…気持ち悪い」
「んぁ!悪りぃ悪りぃ。気にしないでくれ」
日向がつっこんだにもかかわらず、まだニヤニヤしながら肩を竦める。
「ふっふっふ〜分かってるって木吉ぃ〜」
会話に混ざり込んできた小金井を水戸部は見守ってる。
「ユニフォームが新しくなってテンション上がってるからだろ!?」
「え、そうかのか!?」
「気付けよ!」
「…そろそろ行くわよ〜?全員揃ってる?」リコのかけた声に、日向は部員を数え始める。
「えーっと、二人まだかー?あ!黒子と奥宮か?いや、黒子はともかく、奥宮は何かあったのか?」
「います」
『うわっ!やっぱり!』
そしてこれも恒例になりつつある、ウォーリーを探せならぬ黒子を探せが始まり、黒子は火神に近づいた。
「おまっ、いつから!」
「最初からいました」
そういいつつも、横を向いて息を整えるのを火神は見逃さなかった。
「いや、今回は嘘だろ!走ってギリギリセーフだろ!」
ぎくり、と肩が揺れた。
「カントク」
「黙秘!?」
「ん、なに?」
「菜穂からの伝言です。急用で京都に行ってくるので、非常に申し訳ないが、本日はお休みします。と」
「え、あぁ、うん。メールも来てるから…何で京都…?」
黒子ははい、と頷いた。
「実は菜穂はお嬢様なんですよ。随分と庶民的ですが」
「え、あ、そうなの…」
「……じゃあ、行くぞ!忘れもんはねーな?」
「ふぅ、なーに言ってんの。それをこれから取りに行くのよ!」

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