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帰り支度を始める桃井と黒子、菜穂にリコが近づく。
「もう一つ、聞きたいんだけど…IHに青峰くんが出なかった理由は分かったけど、残り二人は知ってる?」
「推測なので、断言はできませんが、むっくん…あ、紫原くんは赤司くんとだけは戦うことを拒みます。準決勝の洛山陽泉戦の欠場はそのためだと…」
「それで赤司って奴は?」
紫原が欠場したのはわかった。しかしなぜ赤司が出なかったのか。木吉は尋ねる。
「彼は、優勝することに興味はありません」
へ?と誠凛から驚きの声が漏れる。
「ただしそれは勝つ気がないからじゃなく、勝つことが当たり前だから、という意味です」
「赤司の人間であるもの、学業、部活、全てにおいて人の上に立つべきである、か…」
ポツリと菜穂が言った一言にん?と小金井は首を傾げる。呟いたつもりが、思いのほか大きな声だったらしい。集まる視線に菜穂は苦笑をこぼした。
「征、赤司がよく彼の父から言われていたんです。だから私の知る限り、テストでも、ゲームでも、部活も趣味も一切、誰にも負けたことが無いんです」
負けたことないって、こえーな。誰かが呟いた。
「桐皇に勝った後、出ていればもっと楽に勝てたのでは?と聞かれて、彼は一言だけ答えたそうです。『それでは面白くもなんともない』と…」

××××××

雨はもう止んだようだ。
「じゃあ、僕ちょっと桃井さん送ってきます」
体育館の外で黒子と菜穂が桃井とともに遠ざかって行くのを見る。
「どこまでも化け物ぞろいだな。キセキの世代」
日向はポツリと呟いて、ふと、思い出す。
「そーいや、黒子と一緒にいた女子は誰だ?」と。

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