うららかな日差しと頬を撫でる柔らかな春風が吹き込む午後。昼の片付けを終えた燭台切が一休みでもしようかなと廊下を歩いていると、ふとある部屋の襖が開けっ放しになっている事に気付いた。基本的にここの本丸の襖は換気時間以外すべて閉じられているため、その開かれた襖を閉じようと近寄った光忠は、部屋の中を覗いておや、と頬を緩ませた。

中庭につながる襖は開かれており、柔らかく差し込んでいる。地面に散らばる色紙、クレヨン、絵本。そして洗濯物を取り込んでいたのであろう、ふわふわのバスタオルが山なりできていた。そんな山なりのバスタオルの山の中に、遊び疲れたのであろう。短刀達がスヤスヤと寝息を立てている。思わずポケットに入っていたカメラを取り出して写真を一枚。これは後でプリントアウトしてアルバムにでも加えておこう、そう考えながら、光忠はぐるりと部屋を見回した。なぜか彼の主もここにいて、猫のように畳の上で丸まって寝ていた。おそらく洗濯物を取り込んだのは彼女であろう。

「主、起きて」
「んぅ…」

のっそりと起き上がった蓬莱は眠そうに目を瞬かせた後にぎゅっ、と目を擦って、ふわぁと大きなあくびをして再び寝転がる。そんなに寝たら夜に寝れなくなるよ、そう言いかけた光忠は蓬莱の頬を見て思わず声が出た。

「あ、」
「んぁ?」
「跡、ついてる」

きょとんとした蓬莱に自分の頬を指して跡が付いていると告げれば、蓬莱はうわぁ、と畳に突っ伏した。

「これだから畳はぁー!」
「そう言えば主の部屋はフローリングだったね」
「フローリング万歳!でも畳も好き!」

光忠は何度かしか入ったことない蓬莱の部屋はフローリング張りだったことを思い出した。彼女の趣味らしく、"ほくおう"家具というものが置かれた部屋は大変お洒落であった。完全に覚醒したらしく、起き上がった蓬莱は取り込んだバスタオルを畳み始める。光忠が手伝いに隣に座れば、彼女は嬉しそうにありがとう、と告げた。

「畳は好きなんだけどねー、ダニが」
「あー、そっかそっか」

先日刀剣男士の全員を演練にれて行っている間にダニの駆除をしたのは記憶に新しい。水を入れて数時間置くタイプのもので、帰った途端に本丸中の襖が開けられた後のあの解放感はなんとも言えなかった。

「ねぇ主」
「んー?なに?」
「たまには本丸中の襖を全開にしてみないかい?」

思いもよらぬ提案に蓬莱は目を丸くさせ、笑った。

「いいね、それ」


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なにこれ消したい