日曜日のシンデレラ
結果から言おう、コテンパンじゃないけどやっつけられた。おまけに"僕"が我が子のように(語弊がある)育ててきたテツヤ二号(黛先輩のことだが)によって、無理やり性格矯正をさせられた。うちの義弟はエスパーなのか。未来が見通せるのか…これが、本当の…天帝の「そんなわけないじゃないですか、何言ってるんですか赤司くん。厨二はまだ克服してないんですか?今から(無理やり)治しましょうか?」
「黒子…」
「黒子、なんて苗字で呼ばないでください。千夏も黒子です」
ちなみに俺はいま、黒子の家にいる。両親はまだ帰ってきておらず、千夏は自分の部屋でほのかという友達とはしゃいでいる。リビングまで楽しそうな声が聞こえる。
「……では、こうしましょうか、」
「なんだ、」
「これから僕のことはテツヤ、と呼んでもらって構いません。その代わり、僕は赤司くんのことをお義兄さん、呼びます」
「は?」
「まぁ、千夏の事は、赤司君に任せてもいいかと思ってるんですよ。どこぞの馬の骨の知らないやつより知り合いの方がいいですしね。第一候補には火神くんが来ていましたが、赤司くんが戻ったことにより、形勢逆転ですね」
「ちょ、ちょっと待った黒子!」
「何ですか、お 義 兄 さ ん」
「うっ……」
にこり、と笑ったテツヤは、階段の下まで歩いて行って少し声を張った。
「ほのかさん」
「あれ?千夏のお兄さん!」
「今日は少し気を遣いましょう。僕の彼女の家に泊待っていただけませんか?」
「うっそー!千夏のお兄さん、彼女さんいたのー!?」
「はい、紹介しますので、行きましょうか」
「はーい!ちょっと待っててくださいね〜」
ソファーに置いてあったアウターを取った黒子をまじまじと見つめると、黒子は振り向いた。
「なんですか?」
「お前…彼女いたのか?」
「…心外ですね、僕にだって彼女の一人二人ぐらいいます。そしてなぜ過去形なんですか。僕は現在進行形で彼女がいます」
「あ、あぁ、すまなかった…」
ガタン、と上から音がして、準備できましたよー!行きましょ、行きましょ!と楽しそうな声が聞こえた。はい、と返事を返して、黒子はこちらを向いた。
「まぁ、早めに決着をつけてください。千夏のウェディングドレス、楽しみにしていますから」
「ウェッ…!」
お兄さん!早く早くー!と急かされて出ていった黒子、いやテツヤの背中を、俺はただただ見つめることしかできなかった。


「征十郎くん?」
しばらくリビングで一人で今後の展開について悶々と考えると、控えめに鳴ったノックの後に、ひょっこりと千夏が顔を出した。
「あぁ、千夏…」
「どうかした?」
「いや、あぁ、ウェディングドレスに、興味はないか?」
「……うん?まぁ、そりゃあるっちゃあるけど」
「…じゃあ、着てくれないかな?」
「へ?いいけど…」
「その、俺の隣でだけど…」
「…………」
「…………」
「プロポーズ?」
「まぁ、そうなるな…イヤ、か?」
「そんなことないよ…」
そうふふっと笑った千夏を、俺は抱きしめた。
「ふぇっ!?征十郎くん?」
「ごめんね、俺は僕と違って紳士じゃないから」
そう断ってから、俺は素早く千夏の唇を塞いだ。


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