「一卵性の双子だからしてぇ〜なんの不思議もアーリマセンネ〜」
「…この低音ボイスは」

せせらぎの音が心地よくて、何時の間にか東屋で寝ていたらしい。ぐっ、と背伸びした憂はシャイニングの声を聞いて、なぜか無意識に隠れた。

「不愉快なんですよ、あんな軽薄なアイドルと間違われるのは」

本人が何を言ってんだか。小さく溜息をついて、憂はしばらく春歌とトキヤ、シャイニングの会話を聞いていた。

「自分のこと軽薄って…」
「やはりいたんですね」
「午後の検診終わってからずっといた」
「風邪ひきますよ」

東屋から出てきた憂は春歌の走り去っていた方を見つめた。

「oh!Ms.茅野!」
「あ、学園長…私知ってますよ。言いふらしたりとかもしませんので…じゃあ」

入学式の時点でめんどくさい人だと分かったので、憂はそそくさとその場を離れた。

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「ここにはアイドルを目指す人とアイドルの曲を作る作曲家を目指す人、両方いる。お互いの事をよく知るために、一緒に勉強してく訳だけど、一学期の終わりに、アイドルコースと作曲家コースの生徒でペアを組んで貰う事になっている。そして、ペア相手は、このSクラスの中だけに鍵らねぇ。Aクラス、Bクラスどのクラスでも、気に見つけていいんだからな。そのペアで参加して貰う、卒業オーディション。優勝したペアにはメジャーデビューに通じる道が拓けるってわけだ!一学期の終わりに、正式なペアを決めるまで、いろんな奴と知り合って、完璧なペアの相手を探せ。そして一つ、とても大事なルールがある。それルールとは、恋愛絶対禁止令!男女交際は絶対禁止!違反者はいかなる理由でも即退学。これがこの学園のルールだ。」

………話、長い。長い話には縁がない憂は疲れ果てて、突っ伏してしまった。

「茅野!おい茅野起きろ!」
「んー?来栖ぅー?」
「お前のペア、困ってんぞ」
「ペア?私相部屋してる人いないけど…」
「はぁ?おまえ先生の話聞いてなかったのかよ!」
「えー…恋愛絶対禁止令まで聞いた」
「…憂、分かってますよね」
「ゲッ…」

それまで隣で静かに話を聞いていたトキヤが口を開いた。仲良くなった、というか起こしてもらった翔に事のあらましを聞いた憂はふぅん、と呟いた。

「仮のペア、ねぇ…じゃあ私の記念すべき最初のペアは椎名さんね?」
「あ、うん!よろしくね!茅野さん!」
「あー…茅でいいよ、しぃちゃん」

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入学する前に、もしもの時に使うかもしれないと作られたCDを渡されて、憂は部屋で聞いていた。
バンッ!

「茅ちゃん!」
「ふえ?ハル?」
「茅ちゃんは!………あ」
「え、なにさ」
「いえ、迷惑…ですよね」
「いや、話の展開がわからない」
「あ…あの、楽譜…読めます、か?」
「うん、読めるけど…え、ハル読めないの?」
「あ、あの、教えてもらえませんか?」
「もちのろん!ほら、私一人部屋だから気にしないでおいでおいで」

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『二人でつーくりー出すーこのメーロディにのーせて〜』

「お疲れ、ハル。それと、一十木くん?」
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとう!えーっと…」
「茅野憂。茅でいいよ」
「ありがとう!茅」
「よし、頑張った記念に、お姉さんがパフェ奢ってあげる!」

そう言って、憂は音也と春歌をら引っ張って食堂まで行った。

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