週末、憂は外出届を提出してさつきと横浜のカフェに来ていた。

「え、そうなの!?日向龍也が担任!」
「しっ、さつき。声が大きい」
「あ、ごめん…」

憂はばっとこちらを見て来た人達に申し訳なさそうに笑って誤魔化した。

「さすがシャイニング事務所の管轄校だね…すごい…」
「ね、ほんとびっくり。校舎も綺麗なんだよ…ほら、」

そう言って携帯で撮った写真をさつきに見せると、さつきはキラキラと目を輝かせた。

「すっごーい!外国みたい〜!」
「ね。ほんとそう」

画面をフリックして、いろいろ写真をみていたさつきは、ある一枚で手を止めた。

「この子達は?」
「ん?あぁ、友達。クラスは違うけど」
「二人とも可愛いねぇ、さすがアイドル志望」
「あ、こっちの子は作曲家だよ」
「ええっ、そうなの!?」
「勿体無いよね…」

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楽しいお茶会を済ませて、さつきと別れた憂は、そのまま横浜の外れへ向かった。一昨日、黒子から黄瀬と練習試合をするから見に来て欲しい、という旨のメールが届いたからだ。
最寄り駅におりて、地図を開いた。

「んっ、と?ここの道をまっすぐ…」
「茅野か?」
「うん…ん?」
「何、真ちゃんのカノジョー?」
「違うのだよ」
「緑間?久しぶり…ところで、
それなに」

懐かしい声に振り向いた憂は、緑間が乗っているチャリにつなげてあるリアカーを指差した。

「チャリアカーなのだよ」
「……おいお坊ちゃん。車で来いよ」
「ブフォ!ナイスツッコミ!」

ヒーッと笑う男子を一瞥して、憂は再び歩き出した。

「待て、何処へ行く」
「いやだ、教えない。」
「何?」

眉を顰めた緑間を、憂はビシッと指差した。

「こんな変な人と関わりたくない!少しは神宮寺…じゃなくて聖川見習えこのツンデレ!」
「なっ!」

そう言って、憂は一目散に走り出した。

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「あれ、テツヤ…ってえ、頭大丈夫!?」
「あれ、茅野さん」

きゃっきゃとはしゃいで校門を出て行った女子達の情報によると、迷っている間に試合は終わってしまったらしい。少ししょんぼりとしながら、とりあえず挨拶ぐらいはしたいな、なんて思って敷地内に入った憂は頭に包帯を巻かれた黒子をみて、素っ頓狂な声を出した。

「黒子くんの彼女?」
「いえ、同級生でした。ちなみにマネージャーやってました」
「ん?」

ちょっと置いてけぼりを食らわされた憂の前に、短髪の女子生徒が出てきた。

「こんにちは。私は誠凛高校バスケ部の監督、相田リコよ。リコっ呼んでもらって構わないわ」
「あっ、こんにちは。リコさん。バスケ部の監督って事は、黒子くんバスケまた始めたのね…」
「え?」
「あ、いやなんでもないです。私は早乙女学園、アイドルコースに所属しています、茅野憂です。よろしくお願いします」
「早乙女学園!?」
「はい」

にっこりと笑う憂に対して、今度はリコが素っ頓狂な声を出す番だった。

「茅野さん、遂にやるんですか」
「遂に!」

黒子に向かってVサインをした憂はその手首についている時計をみて、驚いた。

「やばっ、門限!じゃあテツヤ、また今度ちゃんと暇な時に来るね!黄瀬によろしく言っといで!!」

そう言って慌てて走り去った憂を、誠凛高校バスケ部のメンバーはポカンとしながらみていた。

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「そう言えば黄瀬くん」

5vs3のストバスで勝った黒子は、ふとある事を思い出して黄瀬に話しかけた。

「ん?なんスか?黒子っち」
「試合後に、茅野さんに会いました」
「うそっ!黒子っち茅っちとあったの!なんスかそれぇ〜!羨ましいッス!」
「茅野さん、早乙女学園に入学しました」
「えっ!早乙女入れたんスか!」
「メアドは変わってないそうですよ」
「じゃあ今日帰ったら早速メールするッス!」

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