「ねぇートキヤァー!」
『酔ってますか?』
「はぁ、私が未成年だってこと知ってるでしょ!」
『はいはい』

入学式の一週間前から学園の寮に入る事になっているから、憂は部屋にいれる荷物の整理をしていた。学園から届いた封筒の中に入っていた部屋割りによると、憂の部屋は一階の角部屋で一人部屋らしい。それを知った時、憂は心の中で小さくガッツポーズをした。

『そういえは憂、あなたに言わなければいけない事がありました』
「でしょうね、暇だから電話してくれるような人じゃないし、トキヤは」
『私は忙しいので、それで、春から早乙女学園に通うことになりました』
「へぇー早乙女学園にしたの?え、早乙女、学園?」
『はい、憂、一年間よろしくお願いしますね』
「はぁ!?ざっけんな!」
『女子がそのような言葉遣いをしてはー』

ガシャン、と荒々しく電話を切った憂はぼふんとベットに倒れ込んだ。

「うわ、まじか〜マジか〜」

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慣れない環境のせいか、いつもより早く起きてしまった。うーん、と背伸びをして、折角だからと思い、制服に着替えて散歩に出かけた。
入学式の執り行われる広場は、設営がすでに終わっており、最終確認のため、スタッフが奔走していた。後ろ側においてある掲示板に、クラス分けの紙が貼ってあった。

「あ、やった…Sクラスだ…」
「あら、じゃあリューヤのクラスね〜」
「え、あっ!林檎ちゃん!」

いきなり声をかけられて、慌てふためく憂の頭を、林檎は撫でた。

「かーわーいーいー!アイドルコース?」
「あっ!はいっ!」
「ふふ、かんばってね☆またあとで」

ふんふんと軽い足取りで去って行く林檎を見て、憂ははぁ、と溜息をついた。

「何だあの女子力は…負けてる気がする…」
「そうですね。全くその通りだと思います」
「トキヤ…死ね」
「そういうところがですよ」

脇腹にしたパンチは、見事に躱された。
それに少し苛立ちながら、憂はやっと開場された広場にトキヤと共に立ち入った。

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「何だったんだ…あの入学式は」

どっと疲れを滲ませながら、憂は教室へ向かった。

「あの、」
「はぁー…いや、もう、赤司ぃー!ヘルプ!」
「あの!」
「もう、テツヤ欲しい。マイナスイオンくれ!」
「あのっ!」
「はい?」

呼ばれていたのは私だったのか、と憂が振り向けば、可愛らしい女の子が立っていた。
何処かで見覚えのあの顔だな、なんて思っていると、何かを差し出された。

「ハンカチ、落としましたよ?」
「あ、入試の時にぶつかった子だ!あ、ごめんね〜ありがとう〜」

ハンカチを受け取って、ニコリと笑かければ、女の子ははわわなんて言い出しながら慌て始めた。
(かわいっ!)

「あ、あのっ、Aクラスの七海春歌と言います!お友達になってくれませんか!」

そう言って差し出された手をまじまじと見つめたあとに、憂は手を伸ばした。

「もちろん、私はSクラスの茅野憂です。よろしくねっ」
「えっ、Sクラスなんですかっ!」
「うん」

すごいです!そう言ってきゃっきゃとはしゃいでいる春歌に、憂は頬を緩ませた。

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「Sクラスの担任をすることになった、日向龍也だ」

そう言って教室に入ってきた日向に、教室が色めき立った。

「競争率200倍の激しい受験バトルを勝ち抜いたお前ら!早乙女学園へよく来たな!お前らが良く知ってる様に、この早乙女学園はアイドル、作曲家を養成する為の専門学校だ。設備と環境も充実していて、各クラスの担任は全員現役アイドル。ほかの先生達も、有名な作詞家だったり、すべて一流揃いだ。優秀な奴はメジャーデビューが出来る。頑張れよ」


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