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タバコが切れた。

もう日はとっくに沈んでしまっているが、いつも在るものがないというのは落ち着かない。手をつけていた書類を一旦横にどけ、ため息まじりに立ち上がる。普段だったら山崎あたりを買いには知らせるところだが、そろそろ集中力も切れてきたため、気分転換がてら外を歩くのも良いだろう。


タバコの自販機を探しつつ、うろうろと屯所周辺を歩き回る。
いや、この辺に自販機は無かったか。だからと言って、いつも買っている小さな商店に行くのはーーー流石にこの時間は厳しいだろう。最寄りのコンビニに目当ての銘柄があることを(柄ではないが)割と真剣に祈りつつ、目的地をそこに変更。
容易に手に入らないと判れば、どうにかして手に入れたいと思ってしまうのが人間、ストックが切れたと判れば途端にバカみたいに吸いたくなるのがヘビースモーカーだ(自覚がない、と言ってしまえば嘘になる)。やはり山崎に買いに行かせたほうが早かったか、と舌打ちをしつつ薄暗い路地に入る。

と、地面からこの場に似つかわしくない声が発せられた。偶々友人に会ったかのような気安いノリで、その声は、

「もしもし、そこの目つきの悪いお兄さん」
「あ?」
「私を拾いませんか。三食寝床付きだとなお良いですね」

何言ってんだこの女。

そこにいたのは、薄汚い着物を着た若い女だった。薄暗い路地裏で、建物の壁を背もたれ代わりに無造作に足を投げ出して座り、爛々と光る眼はじっとこちらを見つめている。

「生憎、女は求めていねェよ」
「ばかですか。違いますよ、このぼろっぼろのちっさい私に、女としての魅力があるとでも思いますか」
「……」

それをお前が言うのか、面倒くせェ奴に絡まれた。

「私の腕を買ってください。お兄さんの所で雇えって言ってるんです」