×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




夜王鳳仙を査定に行くとか行かないとかで、江戸に来たのだけれども。「なまえはそこら辺を見てくるといいよ」なーんて胡散臭いニコニコ顔で団長・神威に背中を(物理的に)思いっきり押され、気が付いたら一人ぼっちで吉原を彷徨っていた。いや地球初めてだから、私。ここの常識とかそういうの教えてくれてもいいでしょうよ。団長じゃなくて阿伏兎が。主に団長には期待してない。つーか、期待するだけバカだ。

その頼みの綱である(仕事中であろう)阿伏兎に会おうと、取り敢えず鳳仙のいるらしい建物に向かう。
うん、その間に「ちょっと観光に来てて、鳳仙のいるところはどこでしょう?」と聞いたら、道端にいた着物着た女の人に物珍しそうな顔をされたの、絶対忘れない。何、私何か聞き方間違えたのだろうか。私から言わせりゃ、あなたたちの着てるものも話し方も何もかも変だっての。

言われた通りの建物に着いた。あれ、なんだか喧嘩やってるみたいだ、凄い騒がしい。まーた団長とかが暴れまわっていたりして。うわ、めんどくさ。
まあそれでも良いや、憂さ晴らしに私も混ぜてもらおっかな、と扉をぶっ飛ばし、その勢いに任せ、目の前に現れた武装した着物姿の女たちをも吹っ飛ばす。なんか、こう、もうちっとばかし重量感が欲しい、相手に。重たいものを蹴っ飛ばした時の爽快感みたいな、ああいう快感が欲しい。

屈強な筋肉ダルマ、ここにはいないのかな。吉原って男が女引っ掛けてあれやこれやする場所だからか、武装してるのは大概女だけだ。これじゃ、私ごときでも倒せるレベルなんだけど、鳳仙とやらの頭の中はどうなってんだろう。団長は言うまでもなく、そこそこ腕の立つ夜兎一人入ってきたらコテンパンにされちゃいそうなんだけどね。
ハーレム状態でも作りたいんだろうか。老いぼれジジイの考えること、私にはわっかんないなぁ。

さて。どうしよう。周りに散らばる女を踏まないように避けつつ、上を仰ぐ。あ、上の階から人、降ってきた。天井を破壊しながら落下してきた女をぼんやり見つめ、立ち止まる。

「……あ」

ちらりと右の視界、掠めたのはオレンジ色の髪、青い瞳のちっさい少女。透き通るような白い肌。彼女の姿を認めた瞬間、同胞、の二文字が浮かんで消える。そのまま彼女は廊下の向こうに駈け去っていった。私には気付かなかったらしい。なんか、団長思い出した。カラーリングが似てたからかな。

団長はどうでも良いとか、そんなの言ってられなくなる気がした。この異様な雰囲気、バ神威のやつ、何かをしでかしそうな気がする。
団長は鳳仙に会いに行った、そんでもって鳳仙は夜王と呼ばれるくらいだから地位が高い。偉い奴は大概高い場所に住んでるもんだ。
よし、上行こう。



上の階に行くほど、動いている人間が少なくなってきている。団長が大人しくしていますように、と今更すぎる願うだけ無駄な願望を持ちながら、足早に駆ける。
なんだか物凄い物騒な物音が聞こえてくるのは気のせいか。怒声とか子供の叫び声とかが微かに耳に入るのはーーー幻聴だと思いたい、なぁ……。

なーんて現実逃避してみたのだが、全くその甲斐なく。最上階あたり、なんか像みたいなのに腰掛けている団長を見つけた。見つけてしまった。
近くにいるのは白髪のジジイと天パ。春雨の資料で見た姿から大分老けてはいるが、なんとなく面影が残っている。そのジジイの方は夜王鳳仙なんだろうけど、はてさて天パは誰なんだ。団長はニコニコしていて怒ってんのか楽しんでんのかなに考えてんのか、ホントさっぱりだし。おまけに悲壮な表情の少年付きだよこんちくしょう。
一触即発、それなりに危ない雰囲気の場を認め、頭を頭痛が襲う。なんじゃこりゃ。





つづきます