if 知らず識らず 桜ルート
桜ルートのネタバレ注意
(アーチャー退場時)
頭の中に浮かぶのは鮮明な光景。弾け飛んだ「アレ」が衛宮くんたちに襲いかかる。
そうだ。思えば最初から。嫌な予感が、してたんだ。
絶対に来るなと遠坂にギアスまでかけられ、今のわたしが出来ることは衛宮邸から魔術を使ってアインツベルンの森を覗き見ることだけ。
全く、アインツベルンの敷地内を見るなんてことすら相応の犠牲を払った上で、かなり魔力だって消耗するのに、なんてことさせるんだ遠坂は。
わかってる。遠坂たちがわたしのことを考えて、わざと置いて行こうとしていたことくらい。わたしにだってわかっているのだ。
視界が真っ暗になった。もう何も見えない。無音状態で、キーンと耳鳴りがする。
「り……ん…ちゃ…?」
「…………」
「ねえ、ねえ凛ちゃん!返事してよ、ねえ!」
いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだ。なんでこんなことになるの、どうしてわたしはひとりでのうのうとこんなところにいるの。いやだよ、ねえ、凛ちゃん。
「なまえ」
「え……?」
「……凛、をーーーー」
どういうことだ。今何が起こってるんだ。アーチャーはなぜわたしが覗き見してたことに気付いたんだ。
「ちょっとアーチャー、聞こえないん、だけど」
こちらの言葉が届かないのはわかっている。だってこれはそういう魔術だ。半端なわたしじゃ、音声と画像を捉えるだけで精一杯なんだから。
それでも、聞き返さずにはいられなかった。
アーチャーが愛おしげに、マスターである遠坂を見つめた。
頭が真っ白になる。これって。これって、まるで。
「ここまでか。達者でな、と……」
嫌だ。そんなの聞きたくない。
目から温かい液体が零れ落ちたと同時に、ノイズによって全ての音が掻き消えた。