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どうにかこうにか野崎を説き伏せ、バインダーとボールペンを彼の手から離し、リビングに三人集合する。休憩時間が休憩時間になっていないような気がするのは気のせいなのかな。堀には申し訳ないことした。気分転換にはなっただろうけど。
何はともあれ、やっと休憩らしき休憩時間になった。机の上には、先程私が買ってきたお菓子。早速出番があったようで何よりだよ。

暫く無言でテレビを眺める。よく考えれば、野崎はお喋りな方ではないし、堀と私もそこまで仲良くなかったわけで、無理して場を盛り上げようとする必要なんてなかった。そもそも、彼らは作業をしていたわけだし。何で私、あの時必死に話題を探してたんだろう。気が動転していたのかな。
私が脳内で一人反省会を開いていると、ふいに、お皿の上のお菓子をつまんでいた堀が頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、首をかしげて口を開く。

「野崎と長谷部って知り合いだったのか?」
「中学が一緒だったの。野崎が元バスケ部、私が女子バスケ部の元マネージャー。少しだけ顔見知りだったんだよね」

そこまで仲が良かったわけじゃない、遭遇したら挨拶と少しばかり世間話をする程度だ。それで締め切り前の切羽詰まった時に、たまたま校内でばったり会って、そのまま野崎の家に引きずり込まれて手伝わされた。今となっては良い思い出だ。まあ、私には絵心がないから、消しゴムかけくらいしか出来ないんだけど。
パリパリとポテトチップスを音を立てて咀嚼していた野崎が、あ、と声を出す。

「そういえば、先輩たちも知り合いだったんですね」
「知り合いっていうか、まぁ、同じクラスだしな」
「殆ど話したこと、なかったけどね」

というか、席が隣になった今日すら、軽い会話の一つも交わさなかったくらいだし。その原因の一端は、休み時間になるたびに直ぐさま声をかけてくる、前の席の友人にもあるんだけど。


お茶を飲み終わり、そろそろ再開するかと野崎が腰を上げた。手馴れた手つきで食器を片付ける後ろ姿を横目に、携帯電話を確認する。どうせ家には、まだ誰もいないし。ここで時間を潰させて貰おうかな。

「ね、ちょっとのんびりしていってもいい?」
「いいですよ。今日の分はあと少しですし」
「ありがと。いい感じの電車来るまで、ちょっと時間があるんだよね。邪魔しないようにするから!」

家で携帯いじっているか音楽聴いてるくらいなら、野崎の家にいる方が有意義な時間になる、気がする。丁度良いから先月号の月刊少女ロマンスでも読んじゃおう。まだ読んでなかったし。

別の場所に避難させていた道具一式を机の上に配置しながら、堀がこちらに顔を向ける。

「長谷部って電車通学だったのか?」
「そうだよ。堀も?」
「ああ」
「じゃあ帰り、途中まで一緒だねー」

知らなかった。行き帰りで同じになったことは、一度もなかったように思う。それとも、知らない間に駅構内ですれ違ったりしていたのかもしれない。
やっぱり、今まで話したことがなかったはずなのに、野崎の家に一緒にいるって変な感じだな。こんなに話すことになるなんて、想像もしていなかった。急展開すぎて、頭の中が整理出来てないよ。もしかしたら、慣れない環境に、気分が浮ついているのかも。

口数も少なく、せかせかと作業を始めた二人の背中を見て、目当ての漫画を探そうとしていた手が止まる。気が変わった。仕事してる二人の横で漫画を読むのは気がひける。漫画読むのは今度でもいいし、今は何か手伝おう。取り敢えず野崎に指示を仰ごうと、着ている長袖カーディガンの袖をまくった。

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