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もう二年も経ったのかぁ、と窓の外を眺めながらため息をつく。結局、誰だったのかはわからないまま。もう、卒業しちゃったかもしれない。
ばかだなぁ私。もう会えないんだから、忘れちゃえばいいのに。
でも、何度そう思っても頭の中から消えてはくれなくて。逆に時間が経てば経つほど、気になって気になって仕方がない。
諦め悪いなぁと自分に呆れてしまう。この高校生活で、何度これを繰り返したんだろう。





もうそろそろ席替えでもするか、という担任の気まぐれで、今日は席替えをすることになった。

くじを確認して喜んだり、反対に青くなったり。皆お目当ての人と近くになったかどうか聞き合うので忙しいらしい。高校三年生にもなって、そんなに席替えではしゃぐかというツッコミは心の中にしまい込み、席を移動する。

あ、ラッキー。私後ろの席だ。窓側から二列目、一番後ろの席。欲を言えば窓際の後ろから二番目が良かったなぁと思いつつ(そこが一番、教師の目の届きにくい場所らしい)、着席する。

「あ、佳が後ろだったんだ。やった」
「そうだよ」

頭の上から、明るい声が降ってきた。授業で当てられたときはヘルプお願いね、と両手を合わせている友人は、私の前の席らしい。近くに仲良しの女の子がいるなら一安心だ。左右を確認するとどちらも男子だったので、彼女がいてくれて良かった、と安堵する。
その本人は、自分の椅子に座ってから直ぐさま振り返り、内緒話をするようにこちらに顔を近づけてきた。

「あ、隣の席、堀くんじゃん」
「え?あぁ、うん」
「せっかく近くなんだし、聞いてみたら?佳が二年前に会った、演劇部の王子様に心当たりないですかーって。もしかしたら知ってるかもよ?」
「今聞いても、二年の鹿島のことだと勘違いされるのがオチだと思うんだよ」

確かに、私の隣の席は演劇部の部長(らしい)堀みたいだ。今までに話したことはないけれど。
だけど「演劇部に王子様いる?」なんで聞いたら、どう考えても鹿島の名前が出されるに決まってる。だって、部長直々に彼女のお出迎えに行ってるって噂だし。というか、演劇部の花形って言ったら鹿島だし。そもそも、私が過去に同じようなことを尋ねた演劇部の部員数人も「え?それって鹿島のことじゃないの?」なんて真顔で言ってたくらいだから。

「なーんでそこで聞いてみないかな。聞くだけだったらタダだし、ダメ元で頼ってみれば良いのに」
「まぁ、気が向いたら、だよ?そのときは聞いてみるね」

気が向くことはそうそうないと思うけれども。というより、高校生にもなって、隣の席の男子に「王子様で心当たりのある人いない?」なんて真顔で聞ける方がおかしい。

「どーせ、佳は聞かないんだろうけどね?私が代わりに聞いてあげよっか?」
「やめてよ。私、残念な女の子だって思われちゃう」

流石。私のこと、よくわかってらっしゃる。勿体無いなぁ、わかるかもしれないのになぁ、とわざとらしく零しながら彼女は前を向いた。


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