×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

交差する轍





今思えば簡単なことだ。
俺を庇ったために彼女が居なくなってしまうのなら、今度は俺が土御門を守れば良いんだ。

それがきっと戦う意義で、何よりも捨てがたい願い。
何度も何度も消えてしまった彼女の未来を、いつか、必ず共に進んで行くために。
戦うことしか知らない彼女の生きる意味が俺で、俺が何が何でも守り抜きたいと思った女の子が土御門であるなんて、何ともわかりやすくて単純だ。

だからもう、頭の中で自問自答を繰り返し、ごちゃごちゃ考えなければならないような他の理由なんて必要ない。例えるなら正義とか世界平和とか、そういった定義付けされていない曖昧なものが、俺の叶えるべきことではなくて。
信念とか理想とか、そんな大きなものをひとりで抱えなくたって、結局、手を伸ばしたい/手に入れるのはひとつだけ。たった一つの願望を叶えるためならば、俺は……。


◇ ◇ ◇


目の前に立つ男を目にして、以前教会であった時よりも地にしっかりと自分の両足がついている、そんな気がした。
これまでサーヴァントとマスターとして戦ってきたセイバーは、門にいるアサシンとの交戦が終わった頃だろうか。錯乱のため柳洞寺の中で二手に分かれた遠坂は、金色のサーヴァント……ギルガメッシュと遭遇していないだろうか。「あんたは自分のことだけ考えてなさい、失敗したら許さないんだから!」という強気な彼女の叱咤激励が脳裏に浮かんですぐ消えた。

そして。この場には、今まで幾度も助けれてくれた強くて脆い彼女はいないけれど。
見据えるは倒すべき相手、背中には大好きな女の子、そんな単純明解な構図で充分だ。


土御門に「待ってる」と言われたから。


だから、これから先も何度だって、彼女の道を切り開くために。
迫り来る脅威から守り抜き、彼女の笑顔を一番近くで見守るために。

「言峰、綺礼ーーー!」

だから、どうか。全てが終わった時にはとびきりの表情で。

お前の「おかえり」の言葉ひとつ。それだけで、もう幸せだ。


- 53 -


[*前] | [次#]
[戻る]