目が覚めたら牡丹も士郎もいない、だなんて。 ―――本当、予想を裏切らない行動をしてくれる。だからあれほど迂闊に動くなと言い聞かせたのに。 「うん、まあ、仕方ないか」 やろうと思えば部屋に縛り付けておくことだって出来たのである。魔術でも使えば、簡単に二人を拘束できたはずだ。 でも、それをしなかった。いや、正確に言えばできなかった。 そこまでの行動に移せなかったのは、結局、甘かったのか妥協だったのか。とにかく、自分の意思であるのは確かだった。 ―――凛、アレのことをよく見ておけ。彼女は君が思っている以上にしたたかで強情だ。 何故アンタに言われなくちゃならないの、そう言って突っぱねた割には記憶にこびりついているアーチャーの言葉。どんなに拒んだって、アーチャーの助言はいつだって的中するのだ。 「馬鹿ね。何やってるの、もう」 呟いた言葉は誰に向けてのものだったのか。 二人の行く先にはアテがある。助けに行こうにも、サーヴァントもいない、彼女のように戦闘慣れしてもいない自分が一人で外に出るわけにはいかない。それこそ二の舞ってヤツだ。 「アイツが居れば―――なんて、無い物ねだりしても変わらないわね」 だからと言って、自分だけ何もしないわけにはいかない。何が何でも、彼を聖杯戦争の勝者にしなくてはならないのだから。 [*前] | [次#] [戻る] |