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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

名も無き感情




「土御門、聞いても良いか」
「うん。なあに」
「お前は一体何者なんだ?」

「―――あ、そっか。確かにそうだね」

土御門とはクラスメイトであり、別に顔も知らない仲というわけでも何でもない。この前だって教室で話したし、機会があったら世間話をするくらいの仲ではあるはずだ。


「何度考えても、しっくりくる言葉がないなぁ」
「え?」
「幻滅しないでね。私、本当にただの魔術師なの。ていうか、厳密に言うと魔術使いかな?」
「魔術使い?」
「うん。本当に、遠坂みたいにちゃんとした魔術師ではなくて。縁と運と成り行きで、ちょこっとだけ魔術を使えるようになっただけの、ただの一般人だよ」

遠坂曰く半人前に片足突っ込んだレベルの俺には、彼女の言わんとする「魔術使い」の正しい意味がわからない。

「信用なんかできないと思うけど、まあ一応よろしくね」

微笑みながら手を差し出されてぎこちなくなりながら握る。俺より小さい、暖かい手だった。

「でも俺、土御門のことを疑ってなんかいないぞ」

小さく息を漏らした。間髪入れずに顔が上げられた。まん丸と開かれた瞳が、途端に緩んでゆくのがわかった。

「そうか。……そうだね、衛宮くんは、そういうひとだね」

それは、やけに大人びたセリフだった。

困ったように暫く視線を彷徨わせた後。

きゅるるるるる、と誰かの腹が鳴った。




「衛宮くん、こちらのおうどんはもしかして頂いて良いのでしょうか」

何故そこまで畏まる。

「ああ、食っていいぞ。大したものじゃなくて悪いが……」
「ありがとう」

ふわりと笑った。穏やかに笑った顔を直視したのは初めてだったかもしれない。
いただきます、ときちんと手を合わせてから、土御門は箸を手に取った。
喜んでくれるならこちらも嬉しい。作った甲斐があったというものだ。
静かにうどんを口にする土御門を眺めながら、ふと以前より疑問に思っていたことをぶつけることに決めた。ゴタゴタしていて聞くに聞けなかったことだ。

「遠坂と土御門ってどういう関係なんだ?」
「顔馴染みってところじゃない?」

遠坂が入ってきた。
手には絆創膏を持っていた。土御門の傷を手当てするために戻ってきたようだ。残ってるのは顔の傷だけだし後からやれば良いか、と零して遠坂はどこからか持ってきたサンドイッチにかぶりつく。何やら台所でやっていたのは自分の食事を作っていたのか。
これから遠坂と俺の分も作ろうかと思っていた所だった。自分で調達したのなら良かった。俺の夕食は余った麺を茹でればすぐ用意できるだろう。もう一品増やしても良いかもしれない。うどんに舌鼓を打っている土御門にもう少し食わせてやりたいし、俺自身も結構腹が減っている。

「えー。なんで?仲良しの友達って言ってよ!」
「昔からの知り合いなのか?」
「中学校からの腐れ縁ってところ」

穏やかに言い放つ遠坂に向かって、土御門がわかりやすく拗ねた顔をした。
俺の知らない、年相応の顔だった。

 

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