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「#幼馴染」のBL小説を読む
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久々に夏祭りに行きたくなった。

駄目元で友人に提案してみると「え?珍しいね、いいよ」との返答。浴衣を着て行こうと約束も交わし、集合場所である駅前についたんだけども。

「……いない?」

何処にもいない。まったく姿が見えない。いるのは、浴衣を着てはしゃいでるカップルとか団体とか、それだけ。部活帰りらしき人たちもいて、まだ祭りのある敷地内に入っているわけでもないのに、大変な賑わいよう。うん、この状況で一人っていうのは、なかなか精神的に堪える。
時計を確認すると、もう待ち合わせ時間から15分経っている。もしかしたら、結構混んでいるのかもしれない。とりあえず、どこにいるのかだけでも知ろうと、携帯電話を操作した。

「もしもし?」
「あぁもうごめんね、佳!今電話しようとしてたとこ!電車に乗り遅れちゃったんだよね、丁度通勤ラッシュに巻き込まれちゃってさぁ」
「あ、そっか。じゃあ先に行って何か食べてるから、着いたら連絡ちょうだい」
「わかったわ。後から奢るから、ホントに申し訳ない!」

心なしか友人の声が疲れている気がする。急ぎすぎないようにね、と一言忠告をし、祭りの賑わいの方に向かって足を進める。

うう、お腹減った。電車に揺られている時にぐうぐうお腹が鳴って、周囲の人に聞かれクスクス笑われるくらいには空腹。屋台で売ってる食べ物を夕食代わりにするつもりだったから、家では何も摘んで来なかったのが裏目に出たのかも。
屋台の定番と言えば焼きそばとか焼きトウモロコシとか?あぁでもたこ焼きとかも捨てがたい。頭の中でシミュレーションしながら、糸で吊り下げられた提灯の下をくぐる。

おお、良いなぁこういうの。夏って感じ。浴衣の女の子とか走り回ってる男の子とか。いつも人混みを避けてたから、こういうの、久し振りでテンション上がりそう。


「あ、たこ焼きはっけーん」

手始めに、すぐ側にあったたこ焼きの出店で夕飯を調達する。捩り鉢巻きのおじさんに小銭を払い、行儀悪いけど歩きながら一つ、たこ焼きを頬張る。
うーん、ちょっと熱いけど美味しい。次は冷たいものでも手に入れようと思い、射的や金魚すくいの屋台を冷やかしながら進む。あ、金魚すくいしたい。何年もやってないから下手くそになっちゃってたりして。

思い出にふけりながらどんどん奥に歩いていくうちに、慣れない下駄だからか何なのか、少し足が疲れてきた。ここで色々食べ物を買って、どこかに座って休みながら食べるのもアリかも。
焼きそばや綿あめを購入し、片っ端から袋に詰めてもらう。かき氷とかリンゴ飴とか、持ち歩くのには邪魔になるものは後回し。切実に食べたいけど。絶対あとで買いに来よう。

うん、これだけあれば時間潰しにもなるはず。両手に抱えた食材の山に一人頷く。
よーし、次は場所の確保。良い感じのベンチとか無いかなと思い、もう一つ熱々のたこ焼きを口に入れて何気なく入った屋台裏。

「……っ!?」

声にならない声が出た。その勢いで、まだ良く噛み砕いていなかったたこ焼きを飲み込んでしまった。息が苦しい、けど、そんなの考えてられない。
なんか、この提灯とかの明かりが届いてない薄暗い中に変な人がいる。寝そべってカメラを構えている、どう考えてもスカートの中とかを盗撮しているようにしか見えないような人と、その被写体らしきお洒落な美少年。何だろう、この人たち。

いや、いかにも変人って感じの人々とは関わらないのが一番だし。このまま気づかなかった振りして立ち去ってしまおう。だってだって、こんなの巻き込まれたら絶対やばいやつだよね!?震える足を叱咤して、やっとの思いで動かす。でも上手くいかなくて、下駄の下で、砂利が一際大きな音を立てた。変人二人組が一斉にこちらに気付く。

「〜〜〜っ!!」

どうしてこういう時に限ってやらかしちゃうかな私!このままじゃ不審がられる、と感じて咄嗟に取った行動は、思いっきり頭を下げることだった。

「おっ、お邪魔しました!あの私、全力で失礼するので、ど、どうぞごゆっくりお楽しみください……!」

「待て長谷部、お前今とんでもねえカン違いしてねえか!?」

あれ。頭の上から、なんか聞いたことのある声が、聞こえた。

あっちこっちそっち


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