×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

自習時間だというのにざわざわと騒がしい教室内。黒板の前で、体育委員の二人が大声を張り上げている。
クーラーが効いているとはいえども暑いものは暑い。下敷きで扇いでくれる友人に大人しく甘えながら、黒板に白いチョークで書かれた競技名に目を通した。

「えーと、今日はクラスマッチの種目決めしまーす!もう、みんな聞いてるー!?今年も打ち上げするから後で出欠取るよ!よろしくお願いします!」
「あ、もうそんな時期かぁ。懐かしいねえ」

去年は自クラスの競技+野崎のバスケとかも見に行ったっけ。あの時の女の子からの騒がれようはすごかったな。千代に聞いたところによると、野崎の人気は暫くしたら落ち着いたらしいけども、今年もバスケに出たら歓声上がったりして。先輩として鼻が高い。今年は若松も出るだろうし、二人とも活躍が楽しみ。ウチのクラスとどっちか当たってくれないかなぁ、勿論応援するのは自分のクラスだけどね。

っと、人のことは置いといて。私もサッカー、バスケ、バレー、卓球の四つから少なくとも一つには出なければならない。
うーん悩む。去年と同じにしても良いし、でも卓球とかも楽しそう。やってみよっかな。

「私バレーに立候補しよっと。お先にー」

風を送ってくれていた友人は、我先にと教壇まで行ってしまった。ああ、何するか相談しようと思ったのに。
基本的に出場競技は早い者勝ちだから早く決めるに越したことはないし、でも、どうしよっか……。

去年のことを思い返しながら思案しつつ、何となく窓の外に目を向けた所でギラギラ照りつける太陽の光に眉を寄せる。うわぁ暑そう。男子はこの灼熱地獄の中でサッカーとかしなくちゃいけないんだ。女子は室内競技ばっかりでよかった。

と、再び物思いにふけろうと思ったところで、隣で頬杖をついて競技決めの先行きを眺めていた堀がこっちを向いた。即座にどきんと跳ねる心臓には知らんぷりして、全身全霊をかけて平静を装う。

「長谷部は去年、何に出てたんだったか?」
「え?私は、」
「長谷部!今年も女子バスケ出てくれるか?」
「え、ええっ?」
「佳ちゃんとウチのバスケ部女子が出たら絶対勝てるよー!お願いっ」

答えようと思った矢先に、去年から同じクラスの体育委員の二人が、やってくるなり手を合わせて大袈裟に頼みこんで来た。相も変わらずクラスマッチに気合が入っている。優勝にかける思いは誰よりも強そうだ。この分だと今年も各競技ごとに練習のスケジュールとか組みそうだね。
周囲のクラスメイトの視線が一気に集まって居心地悪い。私はただシュートの成功率がそこそこ高いだけで、そこまで戦力にならないと思うよ。このクラスはバスケ部が多いし、それで充分なんじゃないかなぁ。

「長谷部がバスケやってる姿なんて想像出来ねえな……スポーツやってるイメージがねえし」
「そうかな?マネージャーやってた頃に、少しずつ練習してたらシュートはそこそこ上手くなったよ。確かに現役には敵わないけどね」

全体練習後に、シュートの練習をしていただけ。運動部経験がない一マネージャーである私がドリブルとかを上手にできるはずもなく、去年はひたすらゴール下を陣取ってシュートばっかしやってたっけなぁ。

「堀は?去年、何出てたっけ」
「俺もバスケだな。去年、結構良い所まで行ったんだけどなー」
「あぁ、成る程。去年は男子と女子のバスケ、時間被ってて見れなかったんだよね。そこだけ行けなかったの忘れてたよー」
「そう言われればそうだったか?」

去年のことはあんま覚えてねえな、と小首を傾げているお隣さんはスポーツとか結構上手そう。今年もバスケにするなら、是非是非見に行きたい。時間被っちゃ嫌だから別の競技にした方が良いかなー。
うんうん唸っていると、体育委員の男子が背中をバシッと叩いてきて、

「じゃあ長谷部、そういう事だから今年も頼むな!ちょうど後一人で決まるし!」
「え?ええ!?」
「あ、じゃあ俺もバスケにしておいてくれ」
「お、堀ちゃんもか?今年は特に優勝かかってるから、頑張ってくれよー!頼むな!」

堀ちゃんと長谷部、二人ともバスケだって!という元気の良い声が響く。白いチョークでカツカツと書かれた自分の名前をみて、大きめの溜息が出た。強制だったのか、もう私に拒否権なんて無かったんだね……。

「乗り気じゃねえなんて珍しいな。他の競技やりたかったのか?」
「いや、そういうわけじゃなくてね。ちょっと困るなぁって思って」
「困るって、何が……」
「佳!今年はバスケ、男女で時間被ってないってさ。良かったじゃない」

堀が何かを言いかけたようだったけど、それは前からの元気な声に掻き消された。
せかせかと歩いて友人が戻ってくる。彼女の手にはクラスマッチ当日のタイムスケジュールが書かれた冊子。

「やった!」
「また今年も全部見に行くの?」
「うん!勿論だよ」

手渡されたスケジュールを確認する。本当だ、予選の時間ギリギリ被ってない。よかったぁ。
今年こそは堀がバスケやってる姿見に行かなくっちゃ、ね。体育の時間は男女別々なんだもん、こういう時に堪能しておかないと。

「堀、ちゃーんと見に行くからバスケ頑張ってね!負けちゃやだよ?」
「あ、あぁ……」
「?」

勢いに任せて振り返り、笑いかけたところで異変に気がついた。あれ、珍しい。妙に歯切れの悪い堀の言葉に、まじまじと顔を見つめる。そういえば、いつもよりもちょっと顔が赤いような気がするかも。気のせいかな。


最短距離の甘い台詞


戻る