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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


「っていうか当事者放って話進めないで欲しい」
「ですよね」

いつの間にか側に来ていた御子柴にぼやきつつ、放っておいたら最終下校時刻まで続きそうな論争を眺める。
あ、そうだ。告白された詳しい経緯、まだ聞いていなかったっけ。この際だし、御子柴に直接聞いてみることにしよう。

「ねえ御子柴……」
「やっぱりお似合いじゃないっすかー!ほら!」
「え、えぇ?うわわ!」
「うわ!?」

急にぐいっと引っ張られ、思い切り御子柴にぶつかった。勢いよく衝突してしまったため、転けはしないけれども、御子柴が少しよろける。
わー、危なかった。ごめんね、と平謝りしてからこの犯人を軽く睨む。
その犯人たる後輩くんは、小さく口を尖らせながら堀たちに向かって言葉を投げかけ続けていた。

「ほらほらほら!先輩見てくださいよ〜!結構しっくりくると思いませんか?」
「もー、腕離してってば」

離れないように(?)ガシッとしっかり後輩くんに掴まれている腕を救出しようと試行錯誤しているところで思い立った。ああ成程、彼的には私と御子柴を並ばせたかったってことか。それならそうと一言何かかけてくれれば良かったのに。いや、まあ、事前に言われたからって私たちが従ってたかどうかはわからないか。
うん、それでも、後輩とはいえ男の子で尚且つイケメンの御子柴だよ。こうやって至近距離にいるのは落ち着かないというか、照れちゃうというか。

「ねえ御子柴…………おーい、御子柴くーん?」

あれれ、おっかしいな。気を紛らわせようとして話しかけたけど、隣の人から返事がこない。どうしたのかと不審に思って、そっと御子柴の顔を見上げる、と。

「……だ、大丈夫?」

なんか、赤い顔のままカチンコチンに固まっていた。あ、キャパシティオーバーだ、これ。
いつになったらこの彼女役論争から抜け出せるのだろう、とか達観している場合じゃなくなった。このままキャパオーバーの御子柴とぴったりくっついている状態っていうのは、ちょっとお互いのためにもよろしくない。

一体、この状況をどうしたものか。未だに男子生徒数人は論争中。後輩くんも私と御子柴の腕を掴んだまま、ぎゃいぎゃいと討論中。そんなに熱を入れなくても良いのに、なんて言ったところで耳には入らなそうなので口には出さずに心の中にしまっておく。
うろうろと彷徨わせた視線の先。そうかなぁ長谷部先輩はもっと、とうんうん唸っている鹿島の横、こちらをじっと見る堀と目が合った。瞬時に顔に血がのぼる。

ああもう、重症だよ。こんな時なのに私、今、誤解して欲しくないとか思ってしまった。不意に蘇ってきた感情に、頭の中がぐるぐる回る。

「あ、そういえばお前のとこの部長が長谷部のこと探してたぞ」
「……へ?」

探してる?部長が?私のことを?何かあったっけ。
思いがけない言葉に、この上なく間抜けな声が出た。ぱちぱちと瞬きして、真っ直ぐに堀の顔を見つめる。

「急ぎっつってたから早く行った方が良いんじゃねえか?」
「え、あ、ありがとう堀」

それはもうちょっと早めに言って欲しかったかも、なんて。でも、こうやって伝えてくれた堀にそこまで言うのは流石に憚られる。

この事態を察したのか、私の腕を掴んでいた後輩くんの手から力が抜けた。











挨拶もそこそこに廊下を全力ダッシュして、部室のある棟に辿り着いた。切らした息を落ち着かせるのももどかしく、声楽部部室の扉を開く。

「お待たせー!何か用事でもあった?」
「ん?特に何かあったっけ?一緒に帰ろっかとは思ってたけど、別にそん時はメールか電話するし」

と、そこにはスマホ片手にお菓子をつまんでいる部長の姿。何だか人を探している様子には見えないような。

「あれ?部長に探されてたって堀に教えてもらったから来たのに」
「私、授業終わってから堀くんに会ってすらないぞ?ましてやそんな話すらしてないのに」
「ほんと?じゃあ何だったんだろ?」

さあ、と首をかしげる部長。何だったんだ、さっきのは。

一歩で景色は変わる


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