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堀の目の前でボロボロになっている鹿島をなんとも言えない気持ちで見つめる。彼女もまあ、全然全く懲りないよね。堀は堀で、鹿島相手に全く遠慮がないというか。これが二人のコミュニケーションなんだろうけど。

「鹿島がダメなら先輩にやってもらうのはどうなんだよ、御子柴?」

本題を忘れかけていたその場の皆に思い出させるように、心なしか大きな声で口を挟んだのは、私の一番近くにいて堀の問いに答えた後輩くん。鹿島がダメなら先輩に……って一体それはどの先輩のことだろう、と彼の示す指の先を辿ると、それは教室内ではなくこちらを向いていて。示す先にいる彼らの先輩(三年生)は私だけ。
あれ、もしかして私、巻き込まれた感じ?

「は?先輩ってどの先輩だよ……って長谷部先輩!?何でここに!」
「や、別に特に何かあった訳じゃなくて。たまたま?」

後輩くんに声をかけられ、視線をこちらに向けた御子柴が、ギョッとした表情で固まった。む、お化けでも見たような大袈裟なリアクションにちょっと傷ついたかも。あ、でもそう言われてみれば、まだ御子柴に声かけてなかったか。
確かに御子柴が驚くのも無理はないと思う。私、基本的に休み時間は部室か自分とこの教室いるし、他学年の階になんて殆ど足を踏み入れないもんね。普段は野崎の家でしか姿を見ないし話さないし、こうやって学校で言葉を交わしてるのって不思議な気分。

「先輩ならちょうどピッタリですよ、ねえ?」
「ねえ、って同意を私に求められても困るよ……まぁどうしてもって言うなら、御子柴も困ってるみたいだし」

私としては堀の前で彼女役引き受けるのは不本意なんだけど、でも何か二年生たちの視線が痛いし、御子柴は御子柴で放っておけないしなぁ。モテる男の子は大変そう。
でも御子柴の彼女役って、私より千代とかの方が気兼ねなく出来そうじゃない?二人なら同い年だし仲良しだし。ううん、やっぱり千代は野崎のことがあるし、こういうの引き受けるの渋るかな。それに、御子柴と千代が並んでるところって、お世辞にも彼氏彼女というよりは近所のお兄ちゃんと妹分って感じにしか見えないかも。ってことは野崎と千代が並んだらもうーーーいやなしなし、これ以上は千代のためにやめとこう。

「うーん長谷部か……どっちかっつーと長谷部は彼氏に翻弄されてる方が似合うんじゃねえか?」
「はい?」
「そう言われれば、長谷部先輩は予想外の事でアタフタしてるイメージありますよね」
「何を言ってるの二人とも!もう!」

話が逸れてるよお二人さん!今は私の話じゃなくて御子柴の話!

「ええーっ、そうですか?先輩と御子柴なら身長的にも問題ないし、見た目的にも釣り合ってるし良いと思うんすけど」

だから、後輩くん(名前わからない)は初対面なのに遠慮なさすぎ!釣り合い取れてるって、この見た目(だけ)はチャラそうな御子柴相手だよね、つまりそれはどういう風に見られてるってことなんだろう?いやいや、イケメンと釣り合い取れてるってことは正直光栄だよ、でも!

呆気にとられる私をよそに、堀と鹿島、後輩くんたちで誰が似合うか似合わないかの論争が始まった。あの、これ舞台とか芝居の配役じゃないからね、皆……。

どうしよう、これ止めた方が良いのかなぁ。

きっと僕の手の中に


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