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「#幼馴染」のBL小説を読む
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たまたま放課後通りかかった二年生の教室の前で、何か見覚えのありすぎる姿がちらほら目に入る。
あれ、御子柴?久々に見た。御子柴と鹿島と、その他数人の男子生徒の姿。ああ、確か御子柴と鹿島は同じクラスなんだったっけ。前に聞いたような聞いてないような。
立ち止まって朧げな記憶を辿っていると、こちらに気づいたらしき鹿島がパッと駆け寄ってくる。なんか忠犬みたい、よしよーしってしたいかも。

「長谷部先輩!どうしたんですか!」
「偶然通りかかっただけだよ。それよりあれ、どうしたの?」

数メートル離れてるここからでさえ、女装だとかパッドを入れるだとか、なんとも不穏な言葉が聞こえてくるのが気味悪くて仕方ない。ええ、女装癖でもあるの、今年の二年生ってばすごい趣味持ってるんだね……。いやいや、もしかして健全な男子高校生ってこんなもんなの?だとしたらちょっと複雑かも。

「え、御子柴が告白されたの?他校の女の子に?」
「らしいですよ、今誰が彼女役をするか勝負してて」
「あ、あぁ、そうなんだ」

成る程、お断りの理由に「彼女がいる」と言ってしまったのか。確かにお決まりの断り文句だよね。
でも、見逃せない点が一つ。彼女(代役)探しと言いつつ、鹿島以外女の子が居ないのだけれど、それで良いのかな御子柴は。もう彼女候補探しというよりは女装コンテストになってるような。完璧面白がられてるよね、これ。

「珍しいな、長谷部がここに居るのは」
「あ、堀。また鹿島探し?」
「まぁな。ったく、あいつは毎度毎度何やってんだか」

わいわいと騒がしい教室を横目に、堀が小さく溜息をつく。いつもいつもお疲れ様です、なんだかんだで鹿島のこと気に入ってるんだろうなぁって感じがして、微笑ましいというかちょっぴり羨ましいというか。

ん、どういうこと?流しちゃいけない感情を見つけ、ピタリと固まる。
なんでまた、私ってば鹿島のことが羨ましいだなんて。こうやって気にかけてもらって、追いかけられるのに憧れてる、とか?
いやいやそんなまさか。でもちょっぴり良いなぁなんて思ったりしなくもないと言いますか……!

「何やってんだ、あいつら」

教室を覗き込み、堀が呆れたように疑問を呈する。その視線の先にはワイワイガヤガヤと彼女役候補を選別する二年生たち。
正直、堀の関心が御子柴たちの方に向いていてホッとした。こんな頬っぺたがあっつい姿なんて見せるわけにはいかないし!

「あ、お迎えですか?実は今、鹿島が御子柴の彼女役するって……」
「あぁ?彼女役だぁ?」

急に不機嫌になった堀に、彼の問いに答えた男子生徒と私の方が大きく揺れる。自分の教室でないにも関わらず、ズンズンと遠慮なく入っていく姿に内心敬意を表しながら、困惑した表情の後輩男子くんと顔を見合わせた。

「い、今の何だったんですかね?」
「えぇ?私に言われても困るよ」
「俺の鹿島を彼女役にするなんざ許さねえ!的なアレでしょうか」
「……あー、それはあんまり予想してなかったなぁ」

俺の鹿島に、という後輩くんの台詞のところで胸がチクリと痛んだけど、知らないふり。いや、ありえない話でもないよね、あの堀の剣幕を見てしまったら。
ああ、見たくないなぁ。でも今逃げてしまったら、それはそれで何かに負けちゃう気がする。整理のつかない気持ちを抱えたまま、一歩も動けずに廊下に立ちすくむ。
堀は一直線に鹿島のもとに向かい、ガシッといつものように胸ぐらを掴んで……あれ?

「ざけんな!仮にも演劇部がなんつーお粗末な演技してんだ!真面目にやれ!!」
「あ、そっち……」

私と後輩くんの声が被る。二人の間に流れる、意味深な沈黙。
本当のことを言ってしまえば、大変ホッとしたと言いますか。ああ、やっぱり堀はこうじゃないとね、とか。安堵感と納得が入り混じった変な感じ。

ああ、もう一挙一動から目が離せないや。こんなんで私、これから先やっていけるのか不安しかないよ。

潰れちゃいそうです


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