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- ナノ -
0401 12:50

士郎と後輩ちゃん
・デフォ名 青葉ちゃん

珍しいことに俺と一成以外の生徒が、碌に訪問客のない生徒会室の住人となりつつある。
今日もまた、朝のホームルームが始まるまでそこそこ時間があるにもかかわらずやって来たのは一学年下の女子生徒。

「あ、衛宮先輩居た。おはようございますー」
「おはよう。青葉」

これまたレアなことに一成ですら「青葉」と呼んでいるものだから、俺も彼女の名字を知らない。校内で見かけたら小走りで寄って来る、まさに犬のような愛らしい後輩である。

そんな青葉、とにかくパーソナルスペースというものが存在しない。
床に座り込んでいたら背中合わせに腰を落とし、こっちに体重をかけて来るのなんてしょっちゅうだ。
他にも背中越しに手元を覗き込んできたりだとか、躊躇いなく顔を覗き込んできたりだとか。彼女の一挙一動に翻弄されている自分は年上として威厳も何もない。そもそも、たったひと学年しか違わない俺に年長の威厳なんてあるはずもないのだが。

「ちょ、青葉っ……」
「え、あー。ごめんなさい?」

狼狽する様子を見せれば、すぐに身を引くあたりは素直と言っていいのかどうなのか。いつも少し困ったような表情で離れて行くもんだから、こっちが悪いことをしているような気分になる。

「ねえ士郎、話があ……」

「あ、えっと、遠坂!別にやましいことはなくてだな、その……後輩の青葉、です」

後輩っていうよりは妹みたいな感じだけど、と言い訳がましく語尾にくっ付ける。

「だってさ、青葉。私の言った通りじゃない」
「ううう、どんぴしゃです。まさか遠坂先輩の言う通りなんて〜〜〜」

「あの、もしかして二人とも知り合いなのか?」
「ええ、まあそんな所。生徒会長サマの従兄妹だって有名でしょう、この子」
「従兄妹?」
「はい。言ってなかったですっけ。正式に言えばタダの親戚です。あっちは本家、私は所謂分家筋ってやつですかねー」

「物静かな和風女子、なんて持て囃されてるんだって。信じられないわよ」
「わ、和風女子……?」
「やだなあ先輩、そんなの体裁ですよ。一応コレでも気を遣ってるんです、実家に」

一応他所からの目もありますしねー。そう笑う彼女の動きに合わせてぴょこぴょこと跳ねる黒髪は触れたら柔らかそうで、普段から落ち着いた雰囲気なんてカケラも見せてなかったはずだ。別にこれは悪口じゃない。

「流石に会長が来たらピシッとしますけど。いいじゃないですか、私も一日中気を張ってたら疲れちゃいます」
「あんたがアイツと中身そっくりだったらって想像しただけで嫌になるわよ」
「あはは。私もあれほど濃い人間じゃないですからねー」

「そういえば遠坂先輩、衛宮先輩に話があるんでしょ。席を外しましょうか」
「助かるわ、ありがとう」
「いえいえ。遠坂先輩にならちょーっとだけ譲ります」

「兄離れする時が来たのかしら。衛宮くん、モタモタしてたら誰かに掻っ攫われてしまうんじゃない?」
「かっ……!?べ、別にそんなんじゃ」
「へーえ、ふーん。どうせ私は衛宮先輩の妹みたいなもんなんでしょ」

「先輩のばーか。そんなこと言ったの、後悔させてやるんだから覚悟してて下さい?」

恨みがましく思い切り引っ張られた耳朶、青葉の甘い吐息の感触が痛さを上回る。

ああもう、降参だ。こんなの敵いっこない。



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