03-1




パラパラと音が聞こえた。
どうやら雨が降り始めたようだ。
そういえば辺りが暗い。
キングは小さく溜め息をつくと、仕事を片付ける手を休めた。

(雨、か……)

雨を見るのは珍しくはない。
だが無駄に広いこの自室でこんな気分になるのは久しぶりだった。
寂しい、切ない。そういった感情と似た、けれど違う……そんな感情。
「下らない」と呟いて再び仕事に戻ろうと書類を手に取った。
が、それは白紙。裏返してみると大量の文字。
確かこれを持ってきたのはナイトだったはず。
そこまで考えると、キングは勢い良く立ち上がった。
ずかずかと廊下を歩くと靴音が響いた。
その音に反応したのか、ビショップが部屋から顔を覗かせていた。

「……おい」
「なんだ?またご機嫌ナナメか?」
「黙れ。……ナイトは何処だ」
「ナイト?あいつなら部屋に――……って、おい!キング!」

ビショップの言葉を最後まで聞くことなく足を進める。
かつかつかつかつかつかつかつ。
その音は目的地に近付くにつれ、だんだんとペースを緩まっていった。
キングはピタリとナイトの部屋の前で止まる。
そして荘厳な装飾が施された扉を蹴り開けた。
真っ暗な室内、静かすぎてよく聞こえる雨の音。
そんな中、ナイトはいた。
出窓に片膝立てて腰掛け、立てた膝の上で腕を組み、顔を隠すように突っ伏している。

「……また貴方ですか」
「はっ、随分と大人しくなったもんだな?」
「口が過ぎますよ、キング。今は貴方の相手をしている暇はありません」

沈黙が訪れる。いつも言い返してくるはずのキングが何も言わなかった。
ゆっくりと閉まる扉。
キングが出ていったのだろうと思った瞬間、カチャリと音が鳴る。鍵を閉める音だ。
ナイトはピクリと体を震わせた。
キングの靴音がいつもより重く感じるのはきっと雨のせいだと決め付け、ナイトは少し体を強ばらせる。
くつくつと笑うキングの声が聞こえ、何が可笑しいと言ってやろうとした瞬間、キングの気配を間近に感じた。

「相手する暇はない?はっ、笑わせるな」

刹那、キングは強引にナイトの顔を上げさせる。
ナイトが見た王の表情は、妖艶とも思える冷たい笑みを浮かべていた。

「相手できないんじゃなく、相手する余裕がないんだろう?」

そこまで言うと、キングは強引に口付けた。




僕は貴方が嫌いだ

100402

……………………
区切り。まだ続きます。
ちょっと長すぎた。
っていうか妄想しすぎた。
やばい…このままでは確実にアッー!!!!



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