novel | ナノ




「遅い」

今日は黄瀬との約束の日、のはずだ。
待ち合わせは10分前。今日はオフの日のはずだから、遅れる理由は、黄瀬のルーズな性格のせいか。
しかし連絡がないということは、どこかで変な輩にでも絡まれているのだろうか。
黄瀬は慣れているのだろう、近寄ってくる男をあしらうのは得意だ。
だから、緑間も特に心配はしない。
しかし、黄瀬から誘っておいて、連絡もなしに遅れる。それだけが不満だった。
絡まれるかもしれないことはあらかじめわかっているのだから、少し早めに行動するなりなんなりすればいいのに、黄瀬は「女の子はおしゃれに時間がかかるもんなんスよ!」とかなんとか言って結局いつも時間ギリギリにくる。だから以下略。
すこしイライラしながら立っていると、見慣れた黄色が走ってくるのが見えた。
相手も緑間を見つけたのか、大きく手を振って存在を知らしめる。

「お待たせ緑間っちー!」
「走ると危ないのだよ」
「相変わらず色気ないスねぇ」
「よし、転んでしまえ」

酷いっスよー!なんて言いながら高いヒールでかけてきた黄瀬に、無意識に溜息が出た。
緑間には理解できないその行動には、慣れているはずなのに、毎度驚かされる。

「いやホントすんません。ナンパされちゃって」
「自慢はいいのだよ」

別に自慢じゃないんスよー、と笑いながら言う黄瀬に、いつものことだと思いながらもすこし苛立ちを覚える。
落ち着いた黄瀬が緑間を見、あれ、と無意識に言葉を零す。

「どうしたのだよ」
「あの…間違ってたらスンマセン。もしかして緑間っち髪のばしてる?」
「………少し、な」

そう、ほんの少し。
ほんの少しの変化だというのに、黄瀬はいつだって見抜いてしまう。
きっとそんなところに憧れて、黄瀬のようになりたいと思っていた。
けれど、この感情は、憧れより少し先だったかもしれない、と今だから思う。

「へーあの緑間っちがねぇ…どんな心境の変化っスか?あっ!まさか緑間っちオトコができた?!どんな人っスか?騙されたりとかしてない?!」
「うるさい黙れ」

マシンガンの様に一人で喋る黄瀬をいつもの様に黙らせ、らしくもないと思いながら手を差し出す。

「緑間っち…?」
「行くのだよ」

今日は、お前と私の「デート」なのだから。




(くだらないと思っていたのに)





真ちゃんの初恋は黄瀬ちゃん。
高尾に恋をして、恋を知って、黄瀬ちゃんへの感情がそれだったことに気づいたらいいな。






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