「なぁ、ゼロス」 そう呼びつけたロイドの声は、妙に神妙な感じだった。 だから、口ではなになに〜?なんて軽く答えていても、内心はドキドキであったし、何を言われるのかヒヤヒヤともした。 ベッドに座ったロイドは、いつもの赤い服を脱ぎ棄てタンクトップ姿。 いつもは手袋をしている掌も、今はしっかりと見えている。そんな手でちょいちょいと手招きをされたらいかない訳にはいかなかった。 「どうしたの、ハニー?」 「ここ、座れよ」 そう、ぽんぽんと示されたのはなんとロイドの膝の上。 え、と一瞬体が引く。ロイドのやることなすことには時たま思いかけないことがあるが、まさかこんな形でそれに出くわすことになるとは思ってもみなかった。 何故膝の上に、だとか、普通逆じゃない?だとか色々思うところはある。しかし、ロイドはそんなことを待ってくれる性格ではなかった。 グイッと、引っ張られた腕。 予想外の展開の予想外の行動に、混乱し置いてけぼりにされ、果ては膝の上にダイブさせられた。もう、何がなんだかゼロスにはさっぱりであったが、それでもロイドは止まらない。ゼロスを膝に乗せたかと思ったら、今度はぎゅうううと抱きしめる。 それは最早抱きしめるの範囲を超えて締め上げているようにも思えた。 (俺、何かしましたでしょうか?) 浮気だってしてないし、寧ろもうロイドくんしか見えていないし、メロメロだし。 嬉しい反面、訳が分からず未だ置いてけぼりのゼロスの手がロイドの肩を掴むと、すっとロイドの腕から力が抜けた。 丁度身体がミシミシと悲鳴を上げ始めた頃だったので、助かったと胸を撫で下ろす。ちらりと下を見ればロイドと目が合った。 「充電!ありがとな」 最近、こんなふうに出来なかっただろ? そう、クシャと笑う彼の何ともいえない破壊力にゼロスの心は奪われた。 充電だとか、そういうことはもっとしっかりはっきりいってくれないと分からないじゃないか!とか。俺もずっとロイドくんに触りたかったんだよ、とか沢山のことが込み上げたがどれ一つ言葉にはならず。 「ロイド、俺様も充電いい?」 なんて、にやけた声で了解をとってみて。『別にいいぜ?』と手を広げられれば気持ちは爆発寸前。 そのままベッドに倒れ込んで、抱きしめれば、旅の疲れなど果ての方まで飛んでいってしまったようだった。 ×
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