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「――――…名前」


あたしを闇が包み込むの感じながらあてもなくただ廷内を歩いていると、後ろから冬獅郎の声がした。まぁ予想通りだったから、これといって驚いたりはしない。今日は振り向かないと決めていた。彼に、最期のあたしを印象付けておくため。あたしを忘れないでっていう、勝手な暗号だった。





「……俺らを、裏切るのか」

「―――……そうだと言ったら?」





あたしから伝えようと思っていたのに、彼はあたしが言う前に真意をついてきた。若干の驚きと疑問に間を開けて少し意地悪に答えてみる。


「誰から聞いたの?」

「藍染。仄めかしてただけだが」

「あーあ。あたしが言ってびっくりさせようと思ってたのにっ藍染隊長の意地悪っ」


なんだ。やっぱりそこまで優しくないかあの人は。解りきっている事だったのになんだか寂しかった。彼との別れの為に用意してくれたこの猶予時間。あたしは彼とさよならしたら、もう彼と逢う事は許されないのだろう。





君が決断しなければ、彼の命が無くなる事になるよ





あたしだって、あんな脅迫するようなヤツの元になんか行きたくない。でもあたしが虚圏にいかなくちゃ彼が助からないのは明白だった。今の彼では藍染隊長には勝てない、どうやっても。そんな事はあたしも彼自身も分かっているだろう。少しだけ愚痴ってみるが、彼の反応はない。どうやらあたしの作戦通り、違和感に戸惑っているらしい。だからといって安心させてしまう気は全く無かった。今まで彼があたしにしてきた素っ気ない態度とか、曖昧な返事とか、全部今仕返ししてやるんだ。別にそれを恨んでるとか、ムカついてるとかそんなんじゃないけど、ただの理由付け。自分を納得させる為だけの口実だ。彼は一向に話しかけて来ない。気配だけで彼の様子を読み取りながら、あたしは口を開いた。


「引き止めないの?」

「引き止めて欲しいのか?」

「別に。だって冬獅郎が止めたってあたしは行くもん」

「…だろうな」


なんだ。やっぱり引き止めてくれないの?ちょっぴり残念だな。彼はもうあたしと逢えない事を知らないからそんな事言えるんだ。そんなの当たり前なんだけど、期待してしまったあたしも自意識過剰過ぎるのかと少しだけ反省した。


「……そろそろ行かなくちゃ」

「………」


時間が来たらすぐにこの世から存在を消す事になっている。あたしはこの世界の土を噛み締めるようにゆっくりと歩を進めた。コンクリートのように白く固められた霊子の壁。触れたくてももう一生触れられないこの世界。急に名残惜しくなって胸を締め付けられた。




「次逢う時は、敵同士だね」




もう逢う事なんてないのに、自分でもベタ過ぎる発言に思わず吹いてしまった。こんなバカな発言にも彼は反応を返してくれない。まさかそんなに動揺するなんて思ってもなかったよ。いつもみたいに強がって「バカだろ」とか言ってくれてもいいのに。

あ、逢えなくなるって事は、これからはそんな会話が一生出来無くなるって事なんだ。ダメだあたし。今の今まで現実逃避に浸って冬獅郎が残念がる事しか考えて無かったよ。冬獅郎があたしと話せなくなるって事は、あたしも冬獅郎と話せなくなるって事なのに。本トバカだ。嗚呼、急に涙が出てきた。こんな現実気づかなきゃよかったのに。今気付くぐらいだったら一生気付かないぐらいのバカになりたかった。不意にふわりと足が宙に浮く。ダメ、今彼と別れたらあたしは使い物にならないよ藍染隊長。ダメもう少し待ってよ。まだ心の整理が出来てないのに。段々と彼が遠くなっていく。さっきまでの余裕など忘れてあたしは無意識に彼の方を向いていた。プライドなんていつもの習慣からは逃れられないんだ。嗚呼、冬獅郎。あたし、まだここに居たいよ。引き止めて。お願いだから









もう一度、貴方と話しをしたいのに。














(そして自らの手で大切な日常を切り離した罪は、一生枷となってあたしを追い詰めた)

























091213
・・・・・そうです私バカです。こんなバカなヒロインに入り込み過ぎて凄い必死になってこれ書いてた世界で1番暗いバカですorzだからこんなにめちゃめちゃなのYO☆でも楽しかったわ。
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