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「あ!居た日番谷!」

「…あ?」


振り向きながら不機嫌そうに呟く日番谷だったが、そんなのお構い無しに名前はその隣まで走り寄ってくる。が、坂道になっている道を全速力で駆け抜けてきた彼女に、いきなり止まる事は困難である。あわあわと声をあげながら日番谷の横を勢いよく通り過ぎると、5メートル程先でようやく止まった。


「へへへ、勢い余ったぜ」

「…バカか」


おちゃらけて笑う名前に対し、日番谷はぎりぎり名前に聞こえるように厭味を言うとその坂を降りて行く。すっと名前の横を通りすぎると、それを追うように名前もついていった。


「せっかく一緒に行こうと思ったのに、それはないんじゃないかな日番谷君」

「勝手にお前が決めた事なんか一々俺が気にする事じゃない」

「何よ、あたしと冬獅郎の仲じゃない」

「いきなり名前呼びになるな気持ち悪い」


レディにそれは酷いんじゃない?とムスッとなりながら文句を言う名前にも、日番谷は冷たく、言葉を返さない。日番谷は時計を見ると、少し早足になって名前との距離を離していった。しかしそれに気付いた名前もまけじとそれについていく。


「バス後何分?」

「5分」

「うそ!ヤバイじゃん!日番谷ほら早く!」


名前は日番谷の腕を掴み坂を駆け降りていく。日番谷は掴まれた腕を確認する暇も無く名前に引かれ歩幅を大きくするが、そのいきなりの事にバランスを崩しそうになり声をあげた。


「ちょ、お前!待て!」

「えっ?ぉ、おわっ!」


名前は日番谷の声に後ろを振り向くが、その足は勢いを止められず意思とは関係無く歩を進めている。ふと元の方向を見ると、足元に昨日降った雨で出来た水溜まりが確認出来た。名前は日番谷の手を引いている事を失念してそれを飛び越えようとするものの、敢え無くバランス崩した。


「痛ぁ…」


打ち所がよく、傷は無いものの打った腰をさすりながら名前は呟く。日番谷は腕を引かれた際に崩れた制服を慣れた手つきで直しながらため息をついた。


「たく、何やってんだお前は」

「だって日番谷が」

「俺は何もしてないだろうが」

「あ、バス!あと何分!?」

「あと…3分ぐらいか」

「ヤバイ!急ごう!ッ…痛っ」


素早く立とうとした名前だったが、どうやら足首を捻ったらしい。ずきずきと右足首が痛んでいた。


「お前、その足」

「大丈夫。こういうのすぐ治るタイプなのあたし」


何事も無かったようにケラッと笑う名前だったが、日番谷は不信そうにその姿を見る。そしてまた小さくため息をつくと、すっと名前に手を差し延べた。


「ほら、つかまれ」

「へ?」

「時間無いぞ。ほら、あと2分。その状態で歩いて行くつもりか?」

「えっ!あっはい!」


焦ったように日番谷の手を掴む名前。日番谷はそれを確認すると、困ったように笑った。


「行くぞ」


ぶっきらぼうに放たれた言葉に彼の優しさを感じ、名前ははにかんだように微笑みを返す。


「ありがと」


すくっと立ち上がると、名前は自分の腕を日番谷の腕に絡めた。不服そうな顔をする日番谷だったが、振り払う事はせずにそのまま歩き出す。へへへ、と笑う名前に、すぐに表情を崩すと、呆れたように笑いながらその坂を降りて行った。

















(これでバスに間に合えば文句なし)

























091116
supercellが大好きな私。ネタに使うの2回目^p^
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