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劇場版第2弾のネタバレ・捏造を含みます。苦手な方は回れ右










しとしとと降る水分の多い雪の中、俺は1人、墓標の前に立っていた。真央霊術院時代を共に過ごした唯一の親友、草冠宗次郎の墓だ。誰よりも世界を愛し、誰よりも強く世界を護ろうとした彼は、四十六室の理不尽な理由により、その世界から存在を抹消された。当然、墓など立つはずもなかったが、ある事件をきっかけに墓が作られ、俺は1年に1度、必ず決まった日にこの場所に来ていた。
今日、草冠と俺の誕生日に。


「…久しぶりだな」


独り言のように話し掛けるも、当たり前に返事はなく、結局独り言のまま。いつか「誕生日が一緒なのは運命だ」なんて嬉しそうに笑っていた彼を思い出し、苦笑を漏らしながら雨雪に濡れた地面にしゃがむと、水を吸った死覇装が酷く重く感じられた。


「…」


草冠はこの死覇装を着ることもなく消された。そう思うと複雑な気持ちになるが、あの事件があってからはそれも少し軽くなった気がする。


『なぁ…もし 俺が…』


彼が最後に何を言おうとしたのかは分からない。でもきっと、あの時俺達は分かりあえたのだと、俺はそう信じる事しか出来ないが、今となってはそう思えることだけでも十分な気がした。
不意に雪が止んだのに気がついて上を見ると、そこには赤みがかった橙色の水玉模様があった。


「名前…」

「そんな格好じゃ風邪引くよ」

「…あぁ」


彼女の傘はぼたん雪に近くなった雪をふわりと受け止めている。立ち上がり、服に付いた雪を落としていると、彼女は気付かなかった背中の雪を当たり前のように慣れた手つきで優しく落とした。感謝の言葉を述べてはいないものの、彼女は俺の心を読み取ったように満足げだった。


「誕生日、一緒なんだっけ」

「まぁな」

「凄いね、運命だよ」


『誕生日まで一緒なのか!これって運命だよ冬獅郎!』


名前はあの事件に関わった上、俺と草冠の過去も知っている数少ない中の1人だ。彼女も多分、複雑な気持ちだとは思うが、それでも笑ってくれているのは、彼女なりに配慮した結果なのだろう。俺に対しても、草冠に対しても。
微笑んだ彼女と今は亡き彼が重なって滲む。


「雪、また積もっちゃうね」

「冬なんだ、仕方ねぇよ」


この短時間でも、大粒となった雪が彼の墓に薄く積もっている。名前は素手のままそれを払いのけると、開いていた水玉の傘を俺に預けた。墓標へ向かう彼女の手には、もう1つの傘が握られていた。


「本トは冬獅郎にって持ってきたんだけど」


そう言うと、淡い青色の傘を広げ、墓標にかけて置く名前。傘が墓標にかかる雪を防いだのを確認すると、彼女はまた満足げな顔をした。


「ハッピーバースデー、宗次郎さん」


呟くように告げ、振り返って笑う彼女はあまりにいつも通りでなんだか気が抜けてしまうが、不思議と安心する。
当たり前のように傘に入り込むと、彼女は擦り寄って俺の手を握った。


「冷たー」

「お前の手だって冷てぇだろ」

「冬獅郎には負けるよ」

「どういう意味だ」


アハハと笑いながらも手を離すことをしない彼女に腕を引かれながら、俺は元来た道を帰ろうと歩き出す。
不意に懐かしい声がしたような気がして1度振り返るが、音を発するようなものはなく、ただ彼の墓とそれを雪から守る青い傘があるだけだった。


「どしたの、冬獅郎」

「…いや、なんでもない」


(いるわけ、ないよな)


心の中でそう呟いて、少しだけ彼女の手を握り返す。
雪はゆっくりと舞い降りて、何故か何処か暖かい気がした。











(誕生日おめでとう、冬獅郎)

























101220
日番谷さんハピバ!マジハピバ!DDR見た人しか分からんネタで本トすみません!でもこれしかなかったのorz草日好きすぎてどうしようもない。日番谷さんと宗次郎さんが誕生日一緒だったらいいよねという妄想の産物でありんした。宗次郎さんちゅっちゅ日番谷ちゅっちゅ
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