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「じゃんっ」

「・・・・は?」


いつも通り暇潰しに現れた名前が握り締めていた掌を開くとそこには大きな種が2粒。彼女は変わらない笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。困惑する。それを俺にどうしろと?


「向日葵の種です」

「見りゃ分かる」

「植えよう」

「何処に」

「そこ」

「言っとくがお前が指差してるのは十番隊の敷地だぞ」

「知ってますけど何か?」


平然と問ってくる彼女に思わず怒りさえ忘れる。まぁ彼女と一緒にいる以上この位で怒っていては身が持たないのだが。呆れて見ていると指を差した方向に歩き出す名前。そのまま窓から外に出たかと思うと中庭の土を目の前にしてしゃがみ込んだ。土に手をかけると一息ついて俺に背を向けたまま口を開いた。


「…冬獅郎」

「何だ」

「あたしさ、明日から長期の駐在任務なんだ」

「…そうか」

「だからこの子の事、冬獅郎が世話してあげてね」

「はぁ!?じゃあ埋めるな面倒くせぇ!」

「残念一足遅かったね!もう埋めちゃった」

「お前なぁ…」


手についた土を払いながら勝ち誇ったように笑う彼女を見て、相変わらず自分勝手なやつだと心底思う。よいしょ、と年寄りのような合図と共に立ち上がると、名前はこちらを見て眉を下げて微笑んだ。



「あたしが居なくても、冬獅郎が寂しくないように!」



常に笑っている彼女。見慣れているはずの笑顔が今は無性に恋しくなった。大切に育ててね、なんて念押しされる。そんな事言われなくても、お前が来なくなったら気にかけるものが無くなって嫌でもその向日葵に世話をやくだろう。そんな自分が想像出来てアホらしかったが、不思議と嫌な気分では無かった。


「…お前も、寂しいからって途中で帰ってくんなよ」

「バカにしちゃいけねぇぜ」


彼女も寂しいのだろう。あれだけ遊びに来ていたというのにいきなりそれが無くなるのだから。仕事詰めの生活なんて彼女はした事があったのだろうか。なんだか親のような不安が募る。嗚呼、そんなのこれっぽっちも表情にするけれど、きっと俺も内心寂しいのだろう。少しだけ彼女に触れたいと思い手を伸ばしそうになる。窓の外で種を埋めた場所を見ながら満足げに微笑みを浮かべている彼女を見て、俺は一瞬躊躇って手を止める。多分、今彼女に触れては離れられなくなってしまうだろう。俺はそのまま手を下ろした。ふぅ、と息をつくとまたこちらを見る名前。そして腰に手を当てながら歯を見せて幸せそうに笑った。



「行ってきます!」

「……ああ、頑張れよ」
















(この向日葵が咲いたなら、この想いを伝えよう)
























100123
「その恋、何色」シリーズ第3弾。
“黄”で日番谷。ひつが最近書けないわ^p^やばしやばし
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