過去ログ | ナノ






今日は朝から雨が降っていて、前から決めていた出かける予定が潰れてしまったと彼女はまたいつものように窓の外を見ていた。はっきり言うと今彼女が十番隊に居る意味はない。まぁそんな事今更だし、静かだから別にいいのだが。


「小降りになってきたー…行こうよ冬獅郎」

「今更仕事放置して行けるか。お前も仕事行け」

「やだよせっかく非番なのに」


どうせ非番じゃなくてもサボるくせに。コイツ最近仕事してたか?名前の事だから部下の事を全く考えていないという訳ではないだろうが、何故か俺が不安になってきた。日頃真面目にやってる俺でさえ非番の予定がないからと仕事を片付けているのに、毎日サボりに来ている彼女が非番だと余裕をかましていていいのだろうか。なんだか段々苛立ってくる。そんな自分を無意識に抑えながら俺はまた書類に視線を向けた。


「ねー冬獅郎ー行こうよー」

「嫌だ」

「冬獅郎ー」

「嫌だ。」

「前から約束してたじゃんかー」

「嫌だっていってんだろうが!」


拒否を続けると流石に諦めたのか、名前はまた空を見てつまらなそうに唇を尖らせて拗ねてしまった。小雨の音はもう聞こえない程に小さくて、聞こえる大半は屋根から滴り落ちる雨水の音だった。諦めても尚帰ろうとはしない彼女の姿をちらりと見ながら、俺は仕事詰めの日々を振り返り筆を止めた。そういえば今まで仕事をしていてもこれといった疲れを感じたことはない。思い出されるのは今も窓を見つめている彼女のおちゃらけた表情で、俺はふと気がついた。
俺は確実に疲れていた筈だ。でもそれを取り払ってくれていたのは紛れもなく、名前なのだ、と。


「冬獅郎ー」

「…今度は何だ」


抑揚もなく呼ばれるその声に我に帰ると、彼女はこちらも向かずに“こっちに来い”と手を招いていた。丁度仕事も一段落付いたところで、俺は面倒ながらも彼女の招く手に素直に従った。


「外に何かあるのか?」

「ほら、あれ」


指差された方を見ると、雲だらけだった空には青空が見えていて、そこに欝すらと虹がかかっていた。薄いながらも7色が綺麗に映るその虹を眺めながら、俺は彼女が当たり前に隣にいる幸せを感じながら、少しだけ口角を上げた。
















(七色の日々をいつまでも、君と)

























100202
「その恋、何色」シリーズ。第12弾。最終回は“虹”で日番谷です。お疲れ様自分。マジで疲れた。
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